契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~


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 一月下旬の水曜日。
 いつも通りに仕事を終えた私は、所長との食事のために侑李さんとの待ち合わせ場所に向かい、タクシーで恵比寿を訪れた。


 お店は、所長が予約してくれていた老舗料亭。
 立派なお屋敷のような門構えに、緊張が一気に大きくなった。
 門をくぐると広い日本庭園があり、等間隔で行燈が置かれている。
 松の木を映す石造りの池には、数匹の美しい錦鯉が悠然と泳いでいた。


 店内に続く引き戸の傍にある鹿威しの音が、まるで私の緊張感を煽ってくるみたい。
 ホテルの部屋に呼び出された先日よりも心の準備をする期間はあったのに、そんな時間は無意味だったのだと思い知った。
 着物姿の女将が上品に出迎えてくれ、部屋に案内される。
 長い廊下を進んだ最奥の部屋のふすまが開けられると、予想通り個室だった。


「ボス、お待たせしてすみません」
「いや、私も今来たところだ。こんばんは、那湖さん」
「こんばんは。先日はシャンパンをごちそうさまでした。それから、お部屋も……」
「那湖さんが楽しんでくれたのなら嬉しいよ」


 そういう意味じゃないとわかっているのに、ふとあの夜の記憶が蘇ってくる。
 甘く抱かれたことを鮮明に思い出しそうになって、慌てて息を吐いて頭を下げた。