契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~

 瞬間、息を詰めてしまう。
 そのまま音もなく唇が重なり、手のひらよりも高い体温を感じた。
 予想外のタイミングでのキスに、私は瞼を閉じることもできずに呆然としてしまう。
 呼吸も忘れていたのか、ハッとした時に肺いっぱいに酸素が入ってきた。


 車から降りた侑李さんが、どこかに向かう。
 彼がいなくなった左側をただ見つめていただけの私は、背後でガチャッと音がして初めて、助手席のドアを開けてくれたのだと察した。


「足元、気をつけて」


 差し出された手を、反射的に取ってしまう。
 すると、侑李さんが私をエスコートしするようにして車から降ろしてくれた。


「じゃあ、また」
「は、はい……」


 声が震えて、彼を見られない。
 侑李さんは、そんな私の耳元で「おやすみ」と囁き、運転席に戻った。
 すぐに車が動き出し、安全な速度でゆっくりと走り去っていく。
 夜の闇に溶けてしまいそうな漆黒の車体が角を曲がるまで、私はこの場から動けなかった。


(今の、なに……?)


 確かめるように触れた唇も、頬も、それどころか顔中も熱い。
 真冬の空の下だとは思えないほど、私の全身は甘い熱に侵されていた。