契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~

「じゃあ、私はそろそろ出るよ」
「えっ?」


 満足そうな顔で立ち上がった所長に、侑李さんと私の声が揃う。


「妻と子どもたちと泊まる予定で部屋を押さえておいたんだが、子どもの熱でみんな留守番させているからね。早く帰って、妻と交代で看病しようと思うんだ」


 愛妻家で、家族思い。
 そんな風に感じる言葉に、素敵だなと思う。
 ただ、今は含みのある笑みに嫌な予感がして、素直に感激する余裕がなかった。


「だから、この部屋は君たちが泊まっていくといい。さっき言ってたお詫びだ」
「いや、ボス……。突然、そんな……」
「なんだ、櫻庭? 櫻庭は明日は休みだし、那湖さんが仕事なら朝はタクシーで送ってあげればいいだろう。朝食は用意するように言ってあるし、専任コンシェルジュをつけてるからなんでも言うといいよ」


 ドアの方に歩いていく所長を追う侑李さんに、私も咄嗟についていく。


「それじゃあ、那湖さん。素敵な夜を」


 ウインクする姿すら様になって、一瞬見入ってしまう。
 その隙に、所長はドアの向こうに消えてしまった。