契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~

 実は、私が退職した理由は、元上司とのトラブルだった。
 DD機器の営業部課長——中郷浩太(なかごうこうた)さんは、最初こそ親切で優しい上司だと思っていたけれど、一年ほど前から少しずつ変わっていった。


 不必要なメッセージが送られてきたり、ミーティングが終わったあとに私だけ残されて必要以上に近い距離で接してこられたり。
他にも、腰や脇腹、背中や腕を撫でられたりしたこともある。
 見る人から見ればセクハラだと捉えられるはずだけれど、そう言い切るにはまだ一歩足りないような絶妙なレベルで触ってくる。


 それ以外だと、ひとりで外でランチを摂っていたら相席されたこともあった。
 毎回偶然を装われていたけれど、女性客ばかりのカフェにいても中郷課長が何度も来ることから違和感はどんどん大きくなっていった。


 そんなことが数か月続いた頃、今度は帰りの電車で課長と会うようになったのだ。
 中郷課長の家は、私の自宅の最寄駅の路線を使うと迂回することになる。
 恐らく三十分ほどのロスになり、通勤で利用するのはおかしい。
 同じ駅で電車を降りられて食事に誘われたことも、数回あった。