伝説の最強美少女。ただし(引きこもりコミュ障付き)

「あー、面倒だ……」


理事長室で僕は一人、そうぼやいた。
暴走族を引退して早4年。理事長という立場になり周りから若出世だからといって妬まれ罵られていたものの、早々に実力を見せつけてからは何も言われない平穏な日々が続いていた。
……まぁ、僕の後輩はそうでもないみたいだけど。

今日はこの学校に転校生が来る日。僕が憂鬱なのもそのせいだ。
転校生は女の子。それだけでも厄介なのに、ましてよりにもよってこの時期の転校生なんて、僕の後輩が目当てとしか考えられない。

僕は4年前まで、h20という暴走族に所属していた。というか、総長という立場に立っていた。
h20は世界トップの暴走族だ。故に、その地位目当てにすり寄ってくる不埒な女はどこにでもいて。
昨年の冬、それは起こった。

発端は副総長の東麻呉羽(トウマクレハ)が連れてきた女だった。
彼女は龍院に興味がないという。なんと奇特な、と皆が興味を持った。……いや、総長だけは早くにその女の本性に気がついて警戒していたな。もちろん僕たち先代も怪しんだ。

ただ、後輩たちはそれに気がつけなかった。
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『へ〜サキちゃん、イケメンには興味無いんだ?』

『何がいいのか分からないわ。そんなの追いかけてるよりも勉強をしてた方が効率的』

『いいねぇ〜。そんな女の子、初めてだよ』

『あっそ』

『サキ、あんま他の男と話すな』

『はぁ? なんでよ』

『……』

『あはっ! サッキー、呉羽はヤキモチ妬いちゃってるんだよ!』

『……うるせぇ』

『…………』

『? そうちょー、どうしたのー?』

『……いや? なんでもないよ』




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『サキ……好きだ』

『私も……』

『やっとかよお前ら……』

『ちぇー。くっつかなかったら俺狙おうと思ってたのにぃ〜』

『ヒュー! おめでとふくそうちょー!』

『……』

『ほら! そうちょーもなんか言ってあげなよ!』

『あぁ……おめでとう』

『なになに? もしかして総長もサキちゃんのこと好きだったとか?』

『そんなんじゃないよ。ただちょっと、気になることがあってね……』


『ふぅん? そっかぁ』

『……』




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『あはははは!! やっぱh20ってチョロいわ! エンの言ってた通りだね。関心無いフリしてたらコロっと落ちたよー。………………うん。…………うん。そう。……予定通りにおびき寄せれば良いんだよね、幹部を。…………オッケー。あの人達あたしの言う事なら大抵聞くから余裕だと思うよ。…………ふふっ、ねー。あたしもまさかこんなに簡単にイケるとは思わなかったよー! これならエンちゃんがトップになるのも時間の問題だね。…………うん、うん! 帰ったらいっぱいイイコトしよーね!! ……ん、バイバーイ!』