お薬を海に流すと、濁った水がみるみる透明になっていきました。透き通って、海の底にいる珊瑚やお魚さんたちまで見えます。ハッピーのお薬で海の生き物たちがみるみる元気になっていきました。

「ありがとう。あなたたちすごいわね」

「それほどでも」

 ハッピーは褒められてご機嫌です。すると、海の底から金色の髪をして、真珠のネックレスをつけた人魚が現れました。

「ありがとうございます。本当はわたしがなんとかしないといけないのに、しくしく」

「お姫様、泣かないでください」

 ハッピーは目の前にいる人魚が人魚姫なのだとわかりました。

「人魚姫さまですね。なんで泣いているのか言ってみてください。なんとかできるかもしれません」

「それはいくらあなたたちがすごいお医者さんでも無理だわ。だって、わたしはボヌール王国の王子さまが結婚すると聞いて泣いているのだもの」

 ハッピーには人魚姫は王子さまが好きなのだなとわかりました。しかし、恋を成就させる薬はありません。おまけにボヌール王国の王子はハッピーの婚約者です。

「そんなに王子さまが好きなの?」

「ええ、わたしは溺れている王子さまを助けてから一目惚れしていたの。それでね、わたしはお姫様をやめて人間になるつもりなのに王子さまは他のお姫様と結婚しちゃうのよ」

 そんなにイケメンなのか。ハッピーも王子さまに興味が湧いてきました。

 そこへ、意地の悪そうな老婆が現れます。

「人魚姫さま、人間になる薬ができました。ただし、これを飲んだらあなたの綺麗な歌声はなくなってしまうでしょう。そして、二度と海には帰れません。再び海に入れば、あなたは泡となって消えてしまうでしょう」

「ちょっと待った! わたしならもっとすごい薬を作れるわ! 綺麗な歌声もなくならないで人間になれる薬! しかもいつでも人魚に戻れるの!」

「商売の邪魔をするでない! あんたは何者じゃ!」

「わたしは通りすがりのDr.ハッピーよ! そんな薬を飲ませるなんて許せないわっ! あなたそれでも医者なの?」

「ハッピー、この薬は毒薬だよ。このお婆さんは悪い人だ」

 ラッキーはお医者さんですから、老婆の薬が毒だとすぐに見抜きました。

「まあ、わたしを騙そうとしていたのね。あなたは何者なの?」

「ふふふっ、バレてしまっては仕方ない」

 低い声から若い女の子の高い声に変わり、老婆が顔のマスクを取ると若くて美しい女性の顔が現れました。

「あたしは赤ずきん! 魔女のお婆ちゃんに育てられたのよ! あたしの目的はこの国の王子さまと結婚すること。そのために人魚姫、あなたが邪魔だったというわけ。ついでに婚約者のお姫様もそのうちやっつけてやるわ」

 慌てて逃げていく赤ずきん。赤ずきんが自分のことを狙っていると知って、ハッピーはびっくりしました。

「とにかく、この薬は飲んじゃダメだよ。わたしたちの薬を飲んで!」

 人魚姫はハッピーのことを信用してハッピーが持っている薬を飲みました。すると魚だった下半身が人間の足に変わりました!

「ありがとうございます! Dr.ハッピーのおかげで人間になることができました! あとはドレスを着てお城に行くだけです!」


⭐︎ドレスシールの着せ替え⭐︎