ひと夏の記録

観察を始めて2日目。
何かがすぐ変わるとは思っていないけど
あまりにも何もなさ過ぎる。
もちろん彼は今日もいた。
いつもと同じく中庭で独り本を読んでいて
たまに吹く風で揺れる髪が
太陽の光に反射しているくらいで
彼本人の意思で動くのは、ページを捲る指だけ。
これは観察だから、彼と話をする気はないし
彼と接触する気もない。
私の自己満足のため行われている
この季節で言い換えれば、自由研究の様なもの。
まぁ他人に言えるような事をしていないので
発表することはないし
飽きたらそこで終了なんだけれどね。

何を読み、何を思い、何を考えているの。
気にならないと言ったら嘘になる。
それはそうでしょう?
気にならなければこんなことしてない訳だし

ぼーっと彼を見ていると、手元からする
ゴトンという大きな音。

…まぁそうか。
観察の結果がすぐ出る訳じゃないのと同じで
私のペン回しもすぐ上手くはならない。
と言うか、すぐ上手くなったら困る
今まである程度の練習を積んでいたのに
出来なかったんだから
昨日今日のこれで出来たら
今までの私は何だったんだってなっちゃう。

まだ観察は始まったばかり
夏休みも始まったばかり
時間は腐る程あるのだ
何もしないで浪費するよりは良いだろう
何かすることがなければやっていけない
家には帰れないんだから
時間潰しは見つけておかなければ…

自分で始めたこの行為をどうにか
正当化するために。
周りの視線から逃げるために
この感情をノートに記入していると
一瞬。
本当に一瞬だけど、下の方から
視線を感じた気がしてノートから顔をあげると

「…えっ」

彼がこっちを見て笑っている
…気がしたんだ。