「……へえ、例の、彼氏さん?」
「うん。さっきまで一緒にいて。湊が私にまだ伝えたいことがあるんじゃないかって背中を押してくれたの」
そう伝えると、湊の眉がぴくりと持ち上がる。
まさか、雅也が今の彼女の元彼の幽霊の気持ちを尊重してくれたのだとは思わなかったんだろう。そもそも、幽霊の話を信じてくれたところから驚いているに違いない。私だって、びっくりした。雅也がここまで真剣に私の話に耳を傾けてくれて、湊のところへ送り出してくれたこと。
「いい彼氏さんじゃん。いい人すぎて……きついね」
「え?」
湊の顔がくしゃりと歪む。彼のそんな切なげな顔を初めて目にした私は、心臓を鷲掴みにされたような衝撃を覚えた。
「だって、そんなに素敵な彼氏さんと一緒にいたらきっと、あゆりはすぐに俺のことなんて忘れてしまうだろ」
「そんなこと……ないって」
「いや、あるよ。恋は上書き保存って言うじゃん。上書きされるんだよ。そういうふうに人間の心はできてるから仕方がない。きっとあゆりは雅也のことをめちゃくちゃ好きになる。いや、今も好きなんだよな。だから付き合ってるんだもんな。……俺はあゆりの過去だから。忘れて当然だよ。いや、忘れなくちゃいけないと思う」
湊の声に、じくじくと生傷を抉られるような心地がした。
違う。違うのに。
だって私はずっと湊のことを忘れられなかった。
雅也と付き合ってからも、そこかしこにあゆれる湊との思い出が離れなくて、上手く歩けなくなっていた。
——そう伝えたいのに、言葉が喉元で絡まって、上手く出てこない。
「うん。さっきまで一緒にいて。湊が私にまだ伝えたいことがあるんじゃないかって背中を押してくれたの」
そう伝えると、湊の眉がぴくりと持ち上がる。
まさか、雅也が今の彼女の元彼の幽霊の気持ちを尊重してくれたのだとは思わなかったんだろう。そもそも、幽霊の話を信じてくれたところから驚いているに違いない。私だって、びっくりした。雅也がここまで真剣に私の話に耳を傾けてくれて、湊のところへ送り出してくれたこと。
「いい彼氏さんじゃん。いい人すぎて……きついね」
「え?」
湊の顔がくしゃりと歪む。彼のそんな切なげな顔を初めて目にした私は、心臓を鷲掴みにされたような衝撃を覚えた。
「だって、そんなに素敵な彼氏さんと一緒にいたらきっと、あゆりはすぐに俺のことなんて忘れてしまうだろ」
「そんなこと……ないって」
「いや、あるよ。恋は上書き保存って言うじゃん。上書きされるんだよ。そういうふうに人間の心はできてるから仕方がない。きっとあゆりは雅也のことをめちゃくちゃ好きになる。いや、今も好きなんだよな。だから付き合ってるんだもんな。……俺はあゆりの過去だから。忘れて当然だよ。いや、忘れなくちゃいけないと思う」
湊の声に、じくじくと生傷を抉られるような心地がした。
違う。違うのに。
だって私はずっと湊のことを忘れられなかった。
雅也と付き合ってからも、そこかしこにあゆれる湊との思い出が離れなくて、上手く歩けなくなっていた。
——そう伝えたいのに、言葉が喉元で絡まって、上手く出てこない。



