当ては一つしかなかった。
湊と行った、一番思い入れのある場所。それは、私の自宅から歩いて十分ぐらいのところにある大きな川に架かる橋だ。
この橋の真ん中で、私たちはよく「青春ごっこ」だなんて陳腐な名前をつけて、仕事終わりにお酒を片手に語り合った。お酒を飲んでる時点で青春でもなんでもないと思うのだけれど、湊は「仕事終わりには絶対酒! 橋の上で飲む酒なんて青春より最高じゃん」と訳のわからない理屈で強引に私を連れ出した。この場所から、トワイライトの空を眺めるのが好きだった。残業が続く日は、夜空に少しだけ見える星を。都会の空にはほとんど星は見えないけれど、それでもまったく見えないわけではない。一等星を見つけた私たちは、もうそれだけで十分楽しかった。
「湊」
たどり着いた橋の真ん中に、確かに湊はいた。欄干に肘をかけて、遠くに見えるビルを眺めている。
背中に声をかけると、湊はゆっくりとこちらを振り返った。
「見つかるかと思ってた」
淡く、微笑みながら言う。
彼の背後には橙色から群青色に染まりゆく空が、まだ生きていた頃の二人を見守ってくれているように広がっていた。
「湊と過ごした場所で一番思い入れの深かった場所って、ここだから」
「あゆりの家から出られないって言ったのによく外にいるって分かったね?」
「それは……雅也が、そうじゃないかって教えてくれたの、自分が死んでることにも本当はとっくに気づいてたんじゃないかって」
湊の前で雅也の名前を口にするのは憚られた。でも、事実を隠して湊と本音で向き合えない。そう思って、ありのままのを話すことにしたのだ。
湊と行った、一番思い入れのある場所。それは、私の自宅から歩いて十分ぐらいのところにある大きな川に架かる橋だ。
この橋の真ん中で、私たちはよく「青春ごっこ」だなんて陳腐な名前をつけて、仕事終わりにお酒を片手に語り合った。お酒を飲んでる時点で青春でもなんでもないと思うのだけれど、湊は「仕事終わりには絶対酒! 橋の上で飲む酒なんて青春より最高じゃん」と訳のわからない理屈で強引に私を連れ出した。この場所から、トワイライトの空を眺めるのが好きだった。残業が続く日は、夜空に少しだけ見える星を。都会の空にはほとんど星は見えないけれど、それでもまったく見えないわけではない。一等星を見つけた私たちは、もうそれだけで十分楽しかった。
「湊」
たどり着いた橋の真ん中に、確かに湊はいた。欄干に肘をかけて、遠くに見えるビルを眺めている。
背中に声をかけると、湊はゆっくりとこちらを振り返った。
「見つかるかと思ってた」
淡く、微笑みながら言う。
彼の背後には橙色から群青色に染まりゆく空が、まだ生きていた頃の二人を見守ってくれているように広がっていた。
「湊と過ごした場所で一番思い入れの深かった場所って、ここだから」
「あゆりの家から出られないって言ったのによく外にいるって分かったね?」
「それは……雅也が、そうじゃないかって教えてくれたの、自分が死んでることにも本当はとっくに気づいてたんじゃないかって」
湊の前で雅也の名前を口にするのは憚られた。でも、事実を隠して湊と本音で向き合えない。そう思って、ありのままのを話すことにしたのだ。



