神様はもういない

「うん。信じてもらえないかもしれないけど……確かにいるの。いまも、この家のどこかにいるはず。私以外にはたぶん見えなくて、本人は自分が死んだことに気づいてなかった。でも性格とか全然変わってなくて……それで、私」
「湊くんのことを、また好きになっちゃった?」
「っ……!」
 核心をつかれて言葉に詰まる。
「私……私は」
「いいんだよ。無理しなくて」
 夜空から星が降ってきたみたいに、すとんと胸に響く彼の優しい言葉。その言葉が、あまりにも痛い。今の私にとって、一番認めたくない気持ちだから。
「納得して別れたわけでもなく、突然の死別だったんだから、気持ちが残っていたとしても不思議じゃないよ。一番最悪なのは、あゆりがその素直な気持ちに蓋をして、無理やり俺のことを一番好きでいなくちゃいけないって思い込むことだよ。俺だって、そんなふうに想われても嬉しくない。むしろ……嫌だ。俺は、あゆりが心の底から俺を一番に選んでほしいと思ってるから」
「雅也……」
 静寂の中に広がる痛みと、切なさが、私の心をがんじがらめにする。
 だけど、雅也の言葉には一切の嘘偽りがなかった。彼は等身大で喋ってくれている。それなのに、恋人である私が、鎧を被ったままでどうするの?
 ごくりと唾を飲み込む。
 先ほど温めていたビーフシチューはもうとっくに冷めているだろうし、床にぶちまけたそれもそのままだ。
 それでも、まだ雅也に話し足りないことがあった。