「山名さん、進捗はどうですか? コンペは十日後だけど、いいのできそう?」
午後二時三十分、私の所属するデザイン課に顔を覗かせたのは東京第二営業部の宗岡雅也。私より一つ年下の二十七歳だけど、中途採用で二ヶ月前に入社した私からすれば、彼は先輩だ。
「うーん、ちょっとまだアイデア出してる途中で……」
「そうですか。まだ時間あるし、ゆっくりでいいですよ」
「ありがとうございます」
山名あゆり、二十八歳。
二ヶ月前の春に現在のパッケージ会社に中途採用で就職を果たした。
以前は不動産会社の総務として働いていたけれど、どうしてもデザイナーになりたくて、受け入れてくれる会社を探した。大学でデザインを学んでいたことが功を奏し、ようやく辿り着いたのが現在の職。が、思っていた以上にハードな仕事に、日々てんてこ舞いだ。
雅也とは同じチームで、十日後に行われるコンペでお菓子の箱のデザインを提案することになった。全国的にも有名な洋菓子店で、大元は大手製菓会社である。そこの、新商品のパッケージデザインを提案させていただくことになったのだ。
『私なんかが担当して良いんでしょうか?』
一週間前、デザイン課の日比谷課長から仕事を任された時には心底驚いた。ほとんど初仕事でコンペなんて聞いていない。でも、課長は「もちろん。期待の新人だからね」と笑って言ってくれた。
『営業部の宗岡くんがぜひうちでデザインを提案したいと掛け合ってくれたそうだ。二人一組で頑張ってくれ』
『……分かりました。ありがとうございます。頑張ります』
中途採用で入った会社で任された初仕事だ。断るわけにもいかず、仕事へのやる気を見せるチャンスだと思い、引き受けた。
それともう一つ。
この仕事を受けようと思ったのには理由があった。
それは……。
午後二時三十分、私の所属するデザイン課に顔を覗かせたのは東京第二営業部の宗岡雅也。私より一つ年下の二十七歳だけど、中途採用で二ヶ月前に入社した私からすれば、彼は先輩だ。
「うーん、ちょっとまだアイデア出してる途中で……」
「そうですか。まだ時間あるし、ゆっくりでいいですよ」
「ありがとうございます」
山名あゆり、二十八歳。
二ヶ月前の春に現在のパッケージ会社に中途採用で就職を果たした。
以前は不動産会社の総務として働いていたけれど、どうしてもデザイナーになりたくて、受け入れてくれる会社を探した。大学でデザインを学んでいたことが功を奏し、ようやく辿り着いたのが現在の職。が、思っていた以上にハードな仕事に、日々てんてこ舞いだ。
雅也とは同じチームで、十日後に行われるコンペでお菓子の箱のデザインを提案することになった。全国的にも有名な洋菓子店で、大元は大手製菓会社である。そこの、新商品のパッケージデザインを提案させていただくことになったのだ。
『私なんかが担当して良いんでしょうか?』
一週間前、デザイン課の日比谷課長から仕事を任された時には心底驚いた。ほとんど初仕事でコンペなんて聞いていない。でも、課長は「もちろん。期待の新人だからね」と笑って言ってくれた。
『営業部の宗岡くんがぜひうちでデザインを提案したいと掛け合ってくれたそうだ。二人一組で頑張ってくれ』
『……分かりました。ありがとうございます。頑張ります』
中途採用で入った会社で任された初仕事だ。断るわけにもいかず、仕事へのやる気を見せるチャンスだと思い、引き受けた。
それともう一つ。
この仕事を受けようと思ったのには理由があった。
それは……。



