結婚の決め手は焦げた玉子焼き!?黒豹御曹司は愛する秘書を逃がさない

「ご、ごめんなさい。無理やり渡して」
 しかも焦げたヤツ!
 BBQの網の上で焼いたから焦げちゃったんだよね。
 
「うちの母親は何にも料理ができない人で、唯一作れるのが玉子焼きだった」
 あれ? 過去形?
 
「甘くて焦げていて。だが、10歳の時に両親は事故で亡くなったから、記憶は曖昧だった」
 沙紀の玉子焼きを食べた時に玉子焼きのことを思い出し、理想の女性だと思った。
 それなのに祖父にアメリカに飛ばされ、沙紀の部署も名前もわからないまま五年が過ぎたのだと暁良は説明する。
 
 CEOを継ぐと決まった時、やっと人事情報を見ることができるようになり、全社員の顔と名前から沙紀を探した。
 秘書を自分で選んでいいと言われ、沙紀に頼もうと4階の営業部へ行ったら、加賀大輝にフラれた沙紀を目撃して……。
 
「……あの日、あそこにいたのは」
「沙紀に会うためだった」
「一年だけ婚約者が必要というのは……」
「そう言えば、同意してくれると思った」
 婚約さえしてしまえば、誰にも邪魔されることなくゆっくり沙紀を口説くことができると思ったというズレた発想の暁良が可愛く見えてしまったのは失礼だろうか?
 沙紀は手を伸ばし暁良の顔を捕まえると、自分からキスを強請るように唇を重ねた。

 夢中で交わすキスにクラクラしそう。
 甘い吐息もズルい。この整いすぎた顔も、たくましい身体もズルい。
 
「……五年前はもっと印象が」
「あぁ、アメリカで肉ばかり食べてトレーニングしていたらこうなった」
「……世の男性が発狂しそうです」
 キスの合間の変な会話でお互いに笑う。
 
「どんな手を使ってでも沙紀を手に入れたかった」
 先日、大輝に言っていたことってこのことだったの!?
 
「それで、結婚してくれるのか? すると言うまで離さないぞ」
 急にむちゃくちゃなことを言う黒豹のような男に、沙紀は笑いながら「はい」と答えた。