結婚の決め手は焦げた玉子焼き!?黒豹御曹司は愛する秘書を逃がさない

「なんでしょうか、加賀さん」
「……あ、えっと少し時間を」
「次の予定があるので失礼します」
 今日はもう予定はないけれど!
 私がCEOの秘書になったからって、今さらやり直そうなんて遅いのよ!
 どうせ暁良に媚びを売るつもりでしょ。

 沙紀は冷静に断ると、学んだばかりの秘書の角度のお辞儀をし、会議室をあとにした。

「なんか雰囲気変わったなぁ。前は素朴な感じだったのに、女の子は服やメイクで変わるんだなぁ」
 営業部長の言葉に、開発部長が反応する。
 
「あぁ、あの子、営業の!」
「そうそう、うちにいた子」
「あの子の資料、見やすくて良かったんだけど、秘書に大抜擢か〜」
 惜しい子を手放したねと開発部長に揶揄われた営業部長は、有無を言わせず急にねと雑談する。

 まったく相手にされなかった大輝は、身体の横でグッと拳を握った。
 
    ◇

「お待たせしてすみません」
 夏目が開いたままにしたエレベータに乗り込んだ沙紀は、暁良に謝罪した。

「大丈夫だったか?」
「はい! 次の予定がありますって断りました!」
「そうか」
 えらいぞと小さい子が褒められるかのように頭をポンポンされた沙紀は、暁良の予想外の行動に真っ赤な顔になる。

「あぁ、悪い」
 つい、と言い訳しながら急いで手を離した暁良の耳も少し赤い気がするのは気のせいだろうか。
 
「お二人の時にしていただいてもいいですか?」
 今は業務中なのでと冷静に夏目にツッコまれた沙紀は、恥ずかしくて死にそうだった。
 
 この日の仕事はこれで終わり。
 少し早いがマンションに帰り、冷蔵庫の中身をチェック。
 鍋やフライパンも見せてもらったが、すべてブランド品だった。
 このフライパンは使ってみたかったけれど、高くて買えなかったやつ!
 
「四角いフライパンはないんですね」
「下の百貨店で売っているのか?」
「もっと安いので大丈夫です!」
 そもそも百貨店で玉子焼き用の四角いフライパンなんて売っているの?