斗真くんは私の話なんて聞かずに、真実を言い当ててくる。

 そーですよ、婚約者候補だとか言われて怒ってますよ。

 なんて言えるはずもなく、曖昧に微笑んでおく。

 するとタイミングがいいのか悪いのか、大聖が教室に入ってきた。

 大聖はあたりを見回すそぶりを見せ、私を見つけると目を細めて思いっきりにらんでくる。

 私は冷や汗をかきながら、首だけ動かしてさーっと顔をそらした。

 なんでそっちが怒ってんの⁉

 できるだけ接しないように、と思って学校まで来たのに、あろうことか大聖が近づいてくる気配がする。

「おじょ……みく、帰りは一緒だからな? 勝手に帰ったらただじゃ済ませねえぞ」

 顔を上げると、見下ろす大聖の目がいつも以上に吊り上がっていた。私はむっとして負けじと言い返す。

「はあ? なんで私が大聖の言う通りにしなきゃいけないわけ? 何しようと私の勝手でしょ」

「俺にもいろいろあんだよ! お前、自分の立場わかってんのか」

 周りには聞こえないように、だけど私には十分聞こえるように大聖は顔を近づけて声をひそめた。

「そっちこそ。私に命令なんかできないはずだけど?」

「うるせ! 俺だって上からの命令なんだよ。お前は言うこと聞いとけ!」

 大聖はそう吐き捨てると自分の席に戻っていく。

 はああ? なんなの、大聖のやつ。同い年のくせして偉そうにして。

「おー、いがみ合ってる、いがみ合ってる。あはは」

 斗真くんだけがのんきに私たちを見て大きく笑う。

 ちっとも笑い事じゃないよー! これは私の人生にかかわることなんだから!

「で、何が原因なの?」

 斗真くんは体をこっちに寄せて、こそっと聞いてくる。

「知らない!」

 私は適当に答えてプイッと顔をそむけた。