翌朝、お母さんから聞いたことによれば律兄ちゃんと大聖は本当の兄弟で、親が東雲に所属しているらしい。親を信頼してたお父さんが打診して、私が生まれる前に偽家族になってもらうことにしたんだって。学校ではコネを使って御影家ってことにしてるって。

 ……だからって何よ。私は『お嬢』なんて呼ばれる筋合いなんかない。

 次期リーダーなんて知ったこっちゃない。

 私はただ、今までの生活を普通に過ごしたかったのに……!

「あ~~、もうっ!」

教室の中でも構わず叫ぶと、私は両手に抱いたリュックにぼすっと顔をうずめる。

 自分の部屋にこもって丸一日。今日は学校があるから仕方なく、家を飛び出してきた。お母さんには玄関で会っちゃったけど、ほかのみんなにはあれから一回も顔を合わせていない。

 柔道の練習をろくにせずに登校したの、初めてかもしれないな。

 いつもなら嫌なことがあれば柔道で忘れられるけど、道場まで行ったらお兄ちゃんとかいるだろうから。それに周りで練習してる人たちが、お父さんの言う『黎明の東雲』なのかもって考えたら、頭がおかしくなっちゃいそう。

 仕方ない、新しい練習場所考えなきゃ。

 これからの憂鬱さを考えて、はあっと息をつく。

「朝からおっきなため息だねえ」

 悠長に少し笑うような声が聞こえてきた。

 パッと振り向くと、私を見つめてくる男の子の姿があった。

 隣の席の久遠斗真(くおんとうま)くんだ。

 斗真くんは自分の席で頬杖をついて面白そうにニヤッと笑っている。

「なんかあったの? 今日は大聖と一緒じゃないんだね」

 いきなり核心を突かれてうぐっとうなった。

「べ、別に何もないよ。たまには一人で登校するのもいいかなって……」

「ふうん? お兄ちゃんたちとケンカしたんだ?」

 うぐぐっ