「えーっと?」

 何この緊迫した感じ。試合とかの話じゃなさそう?

 私はゴクッとのどを鳴らす。

 沈黙を破ってお父さんが重い口を開いた。

「今日集まってもらったのはほかでもない。みくに話す時が来たからだ」

 ゆっくりとうなずくお母さん。

 みんなはもう話の内容を知っているんだろうか。

 大聖と目が合ったけど、すぐにそらされちゃった。

「今日でみくは十三歳になっただろう。将来を考え始めてもいいころだ。それでだが……
みくには、婚約者を選んでほしい。この二人の中から」

「は、はい⁉」

 お父さんは律兄ちゃんと大聖に交互に目を向けた。

 私は自分の耳を疑う。

 こ、こここ婚約者⁉ お父さんはいったい何を言っているの⁉

 だだだだってお兄ちゃんと大聖は兄弟だよ⁉ 十三歳って言ってもまだ中学生だし!

 言ってる意味わかんないよー!

 お父さんは困惑する私を置いてけぼりにして話を続ける。

「御影道場は表の顔なんだ。本当は夜の街を守る『黎明(れいめい)東雲(しののめ)』という組織を運営している。御影家は代々リーダーを務めてきて、今は父さんがやっているんだ。つまり次期リーダーはお前、みくだな」

 れいめいの、しののめ?

 さっきから何がなんやらでぽかんと口が開いたままだ。

「東雲はおもに武道の技を使って夜に暴れるやつらを成敗し、街の平和を守る組織だ。道場の生徒のほとんどが東雲に所属している。今後の東雲のために、みくには結婚相手を決めてほしいんだ」

 私は月に照らされる中、柔道着を着たまま悪い大人をなぎ倒すところを想像した。

 って、はたから見たらどっちも悪い人だよね⁉