朝の練習が終わって、お兄ちゃんと一緒に道場を出てそのまま奥の母屋へと向かう。

 いつものようにそのままリビングへと向かおうとしたけれど、お兄ちゃんに腕をつかまれて止められた。

「今日はこっち」

 お兄ちゃんが足を進めるのはもっと奥だ。

 もうここからはお客さん用の和室しかないのに、いったいどうしたんだろう?

 お兄ちゃんは縁側沿いの部屋の前で立ち止まる。ふすまに手をかける前にすっと勢いよく開いた。

「お前ら、もうとっくに父さんたち集まってるぞ。いつまで練習やってんだ」

 出てきた男の子、大聖(たいせい)は今にもため息をつきそうな顔だ。

 今日の練習、いつもと同じくらいの時間だったはずなのにな。

 大聖は意味ありげにお兄ちゃんと目配せする。私は「ん?」と首をかしげた。

 同級生の彼は私のもう一人のお兄ちゃんだ。周りからは「全然顔が似てない」って言われる、双子の兄。

 といっても、兄なんて思ってない。なぜなら、律兄ちゃんとは違ってまっっったくあてにならないやつだからだ。いつだって突っかかってきて、仏頂面な性格だって私と全然似てないし。双子に上も下もあってたまるもんか!

 そんな彼の顔はほんの少しだけこわばって見える。

 肩越しに部屋の中でお父さんとお母さんが正座しているのが見えた。

 話ってそんなガチなやつ……?

 思わずひるんでいると大聖に肩をつかまれて、すとんと二人の正面に座らされた。大聖とお兄ちゃんもお父さんたちの隣に座る。