仲良し家族は嘘だらけ⁉

 しぶしぶ二人を引き連れて家を出る。

「あー、かったりぃ。なんで学校行かなきゃなんないんだか。最近緊急の呼び出しが多くて寝不足だってのに」

 大聖は頭に手を置きそうぼやきながら、天を仰いだ。

「西明かりってそんなに厄介なの?」

「厄介なんてものじゃないですよ。急に現れた過去最大の不良グループです。グループのメンバー数はいまだ未知数。大人顔負けの子供もいるってうわさです。一般市民に影響がないようにするのが精いっぱいで。
極秘情報なのに、お嬢はどこで知ったんです?」

 お兄ちゃんの口調に、私は顔をしかめた。

「もう、そのお嬢ってやめてよ。周りに人も増えてきたし」

 私の指摘にお兄ちゃんはうぐっと言葉に詰まる。

 登校時間になって、同じ制服姿の人が増えてきた。

 この会話が聞こえたら困るのはお兄ちゃんのはずだ。

「じゃあ……、みく」

「それでよろしい」

 お兄ちゃんのおとなしい姿に、大聖がぶはっと噴き出す。

「何を笑ってる、大聖」

「いやぁ、別に?」

 そう言いながらも、大聖の顔にはにやにやが隠しきれていない。

 学校が近づいてくると、人の流れに逆らうようにして校門のそばに人影があるのが見えた。

「あ、斗真くん」

 斗真くんのほうも私に気づいてさっと手を振ってくれる。

「待ってたんだよ~。前の話、誘いたくてさ」

 前の?

 あの、柔道の勝負ってやつだろうか。

 斗真くんは「ちょっとごめんね」と言いながら人をかき分けてこっちにやってくる。

「斗真が何の用だ?」

「大聖には関係ないよ~」

 彼は大聖とお兄ちゃんの隙をついて、あっという間にそっと近くに立った。

 あまりの速さに大聖がさっと笑みを消して驚いた顔をする。

 斗真くんは私の耳に自分の顔を寄せた。