公園が完全に見えなくなって、お兄ちゃんはやっと手を放してくれた。

「なんで来たのよ」

 私は赤くなった腕をさすりながら頬を膨らませる。

 お兄ちゃんは幾分か落ち着きを取り戻してはあ、と一息ついた。

「お嬢も聞いたでしょう。街が危なくなってるって。勝手に出歩かれては困るんですよ」

「……」

 また、お嬢って。

 私は今も昔も変わらず、御影みくなのに。

 お兄ちゃんが今までと違った態度を見せるたび、なんだかむっとする。

 しばらく二人とも無言で歩いた。

 そのうち「東雲のメンバーに報告しなければ」と言ってお兄ちゃんはスマホを取り出す。

 その姿をそっと横から見つめた。

 お兄ちゃん、どのくらい探してくれてたんだろう。

 家から遠いからきっと最後のほうに来たはずだけど。

 東雲の仕事があったはずなのに、その後ずっと走ってくれてたのかな?

 ……だからといって、絶対謝ってやんないんだからね!

 私たちの間にぴゅうっと夜風が吹いた。

 黙ったままお兄ちゃんが上着を脱いで私の肩にかけてくれる。