――春がくるたび、思い出してしまう。

制服のスカートをなびかせて、坂道を上る帰り道。
ふと、川沿いに咲く桜を見た瞬間、6年前のあの日々が胸の奥で色づき始める。

もう忘れたと思ってた。
あの言い合いばかりしてた毎日も、意地を張って素直になれなかった自分も。
でも、違った。
私の中に、ちゃんと残ってた。あの頃の私たちが――。

あの頃は、バカみたいに君のことばかり考えてた。
声を聞くだけで、姿を見るだけで、心が弾んで。
でも伝えられなかった。どうせ離れ離れになるって、どこかでわかってたから。
だから私は、最後まで “好き” を飲み込んだ。

だけどね。
今でも、春になると不意に君を探してる。
あの橋の上で、目が合ったときのことを、今でも思い出すの。

これは、高校3年生の春、ずっと閉じ込めていた想いがふたたび動き出す――
そんな、私の物語。