孤高の総帥は初めての恋に溺れる

「機内をうろうろしていたよね。
何をみていたの？」

「うん、実はね、私R797Xの機体が大好き
で最近就航したんだけど、初めて乗ったから
もう好奇心が抑えられなくて、ＣＡがいない
時にギャレーまで覗いちゃった」

と言ってペロッと舌を出す穂香が可愛い。

「ふーん、で感想は？」

「もう最高に可愛い機内だった。
エコノミーとビジネスを区切るカーテンや
ギャレーのカーテンもストライプで、機内の
天井や壁見た？グレーとブルーとピンク
だったでしょう？ブランケットも３色から
選べるんだよ。３年前の開発の途中経過の
発表の時からもうわくわくしていたの。
R797Xを開発した人達ってすごいわ。
女心をずど～んって感じ、今までの飛行機は
みんな無機質で色も記憶に残らない。
シートの色がそれぞれ違うくらいで…でも
R797Xはシートの色も３色のストライプで
ビジネスクラスなんかカプセルの色が４列で
グレーとピンク、グレーとブルーになってた
でしょう？もう感動してしまって、その感動
を忘れないように書き留めるのに１時間
かかってしまったわ」

「へえ～、書き留めてたんだ。どうして小説
でも書いてるの？小説家？」

軽く言った碧斗の言葉に、穂香は飲んでいた
ジュースを危うく噴き出すところだった。