「そっか、えまちはまだ転校してきたばっかりだから知らないよね」
あの人たちは、……────だよ。
ひそひそ声で、内緒話をするみたいに告げられたセリフ。
「……桜、蕾?」
思わず小さな声で繰り返すと、こくりと頷いたふたりはさらに声のボリュームを落とす。
……初めて聞いた言葉のはずなのに、胸がざわつくのはなぜだろう?
「うーん、一言で言ったら暴走族……みたいな?」
「っ、ボウソクゾク……?」
「桜蕾は暴走族、って言っても、ただの不良集団じゃないよっ?秋霜学園では、“番人(ウォーデン)"っていう位置付けをされてる」
「番人……」
「そう。学園の中で起きるトラブル、表に出ない揉め事とか、……ルールの“外側”にある面倒を引き受けて、収めるっていうのが主な役割みたいな?だから先生たちも見て見ぬふりをする、というか……認めてる、に近いかも」
夏莉ちゃんの言葉をゆっくりと頭の中で繰り返して、あ、と納得する。
……宗英さんが言っていた兄たちの“特別な立場"って、桜蕾に所属しているという意味だったんだ。



