琥珀と街中でデート(?)することになる咲

渋谷の街中を歩いてる。しかも例のごとく距離が近い琥珀。
琥珀が高身長の王子様オーラ全開のため、すれ違う人が男女問わず振り返る。
咲(なぜこんなことに……、ていうかメイクって言うからてっきり家でやるのかと……)と青ざめる。
咲(それに琥珀くんって、荷物すんごい多いタイプなんだな……意外)
琥珀は咲をメイクするための道具を持ってきていた。咲には言っていない。大荷物を担いでいる。
琥珀の少し後ろで青ざめている咲の手を取り、琥珀が手を引いてくる。
琥珀「ごめん。俺、歩幅合わすのとかできなくて。早いよね?歩くの」
咲びっくりする。否定の言葉の代わりにぶんぶん首を横に振る。
咲(て、てててか、手繋いでるんですけど……!?)

歩きながら咲が琥珀を見上げる。琥珀はご機嫌そう(あまり表情には出てないが)
咲「あ、あの……今日はどうして渋谷に……?」
琥珀「咲ちゃんに合う服探したい。それにあわせてメイクしたくて」
咲「えええ、いい、いいよ、てかそんなお金ないし……!」
琥珀「あー、それは……ごめんね?」
咲ウッという顔をする。琥珀が首を傾げながらあざとく言うので負けそうになる。
咲「だめですだめです、ないんです!すみませんほんと、恥ずかしながら!」
琥珀「はは、うそうそ。大丈夫。父親の知り合いのとこに行くつもりなんだ。だから、お金の心配はしないで」
咲[知り合い……?]

着いたのは、原宿寄りのこぢんまりとした小さな服屋さん。でも置いてるものが大人っぽくて洗練されている。
女性のオーナー1人で経営している静かな店。
咲[素敵なお店……。セレクトショップかな?大人っぽくて綺麗な服がたくさん……]
咲、少し手近なワンピースを触ってみる。
咲(わ、生地がしっかりしてる!花柄はぜんぶ刺繍……!?すごい……か、かわいい……!)
驚きつつもワクワクした表情の咲を見て、琥珀少し嬉しそう。琥珀は奥のオーナーに挨拶しに行く。

オーナー「琥珀くん、久しぶり。連絡くれてありがとう。おっきな荷物(琥珀のメイク道具)持って、気合い入ってるねー」
琥珀「うん、ありがとう晴子(はるこ)さん。あの子なんだけど……」
オーナー「お!任せて!うちの雰囲気に合いそうな子じゃん!」
オーナー(晴子)は琥珀の母親の同級生。琥珀の母の繋がりで、昔、スタイリストとして琥珀の父と一緒に仕事していた。明るい茶髪のベリーショートの粋なおばさん。
オーナーが咲のところに行き、咲に話しかけているのを見る琥珀。
咲がぶんぶん首を振ってわたしには似合わない似合わない!としたり、オーナーに値札を見せられて泡を吹いている様子を見て、琥珀は少し離れたところで柔らかい笑顔になる。

琥珀「よし、俺も準備しよう」
琥珀も机にメイク道具を広げ、メイクをする準備をはじめる。急に真剣な顔つきになる。

琥珀がひと通り準備を終えると、オーナーに呼ばれ、ジャーン!と咲が試着室から現れる。
咲はネイビーのフレアスリーブの大人っぽいシンプルなワンピースに、繊細な花の飾りが連なった、フェミニン寄りの短めのネックレスをつけていた。

オーナー「どう?素材が洗練されてるから、あんまり装飾のついた服はもったいないと思って。でもせっかく若いんだし、かわいい雰囲気にあわせてネックレスはフェミニンにしてみたの」
咲(ひ、ひえー恥ずかしい……泣 こんないい生地の服はじめて着たし、ネックレスもキラキラすぎて!眩しさでわたしの薄い顔なんか白飛びしているのでは……)

琥珀、無言で寄ってきて、オーナーにハグする。咲ギョッとしてたら、琥珀は咲にもハグする。
琥珀「やっぱり晴子さんにお願いしてよかった」
と、オーナーに向いていう琥珀。
そして咲に向き直る。
琥珀「咲ちゃんすごく素敵だ。とっても似合ってる」
琥珀「次は俺の番」
咲、琥珀の真剣な顔に、ドキッとするよりも(あ……真剣なんだ……)と、衝撃を受けたような表情になる。

メイクをされる咲。琥珀はもくもくと黙ってやってくれる。
咲(琥珀くん、すごく真剣な表情してる。……あんまり、表情変わるタイプではないけど、でもなんだか、本気なのが伝わってくる)
すると琥珀が突然話し出す。
琥珀「俺、将来やりたいことがあって」
咲「え?」
琥珀「コスメとか、美容アイテムの会社、経営したいんだ」
咲、メイクされながら黙って話を聞く。
琥珀「俺がコスメプロデュースして、父さんがそのコスメでモデルをメイクアップする。そうやって、ふたりで会社やりたいなって……そのためにも、今は少しずつだけど、コスメのコンテストにアイデアを応募したりしてるんだ」
咲「そうなんだ……素敵な目標。コンテスト、受かるといいね!」
感銘を受けて、ジーンとする。そこにオーナーがひょこっと出てくる。

オーナー「じゃあわたしも、琥珀くんのとこでまたスタイリストさせてもらおっかな」
咲「え!?オーナーさんてスタイリストさんだったんですか!?」
オーナー「そうだよー、わたし、良美(よしみ)(琥珀の母親)……あー、琥珀くんのお母さんの同級生で。その繋がりもあって、琥珀くんのお父さんとは、メイクアップアーティストとスタイリストのコンビで、一緒に仕事やってたの」
咲「えー!」
オーナー「また、お父さんと一緒に仕事したいな……。てか、させてよね、琥珀くん!」
琥珀少し驚いて、でも柔らかく笑う。
琥珀「うん。ありがとう晴子さん」

咲[琥珀くん、そんな想いがあったんだ。……将来の夢かあ。わたしも、今は目の前のことで精一杯だけど、なにか、目標を見つけたいな]

琥珀「できたよ」
咲、琥珀に鏡を渡される。
咲「わあ……!!!」
メイクの完成は見せずに6話終了。