経営学科の講義シーンから導入。
教授「経営管理学の始祖、ファヨールは、現在では主流のPDCAサイクルの源流となる『管理的機能』について提唱しました」
咲は一生懸命メモを取っており、講義中は琥珀もしっかり起きて真剣に教授の話を聞いている。
講義が終わり、生徒がぞろぞろ教室を出ていく中、
教室の机に、ひとりだらーんと腕を伸ばし突っ伏す咲。
咲「はあー、疲れた……」
手帳を確認して、次のバイトの時間をチェックする。
手帳には予定がぎっしり詰まっている。
咲(今日は居酒屋バイトかー…。居酒屋バイト、深夜割増はつくし、料理のレパートリーが増えるから嬉しいんだけど)
咲(同僚の人は怖いし、酔っぱらいの相手はいつまでたっても慣れないんだよね…)
咲「ふー…でも、やるしかない!」
パタンと手帳を閉じてマッスルポーズをする。
咲(今日は冷蔵庫にちょっと良いお肉も買ってあるんだよね。鶏肉だけど、もも肉だし!)
たのしみー何作ろうかなーと荷造りして教室を出る準備をする。
教室を出て歩いていると、
エマとモブたち(なかに琥珀・魁李がいる)がキャンパスの正門あたりで会話している。
エマ「ねー琥珀と魁李もさー、五限終わったら一緒に飲みいかない?」
魁李「俺パス」
琥珀は聞いてなさそう。あくびしている。
エマ「えーっ嘘、やだーなに?デート?」
咲は魁李と琥珀だと気づいてない。隣を素通りする。
咲(飲みって、大学一年生やろがい!かくいうわたしも、これから居酒屋バイトなわけですが……(飲みませんが!))
咲「あ、やばい、時間時間……」
咲は走って居酒屋バイトに行く。
咲(私、いつも走ってるな……汗)真顔ダッシュ。
居酒屋バイトでも咲はとにかく一生懸命働く。
すると、通り過ぎた席に、エマが客として座っていた。琥珀・魁李はいない。経営学科の男女で飲んでいる。
咲(あ、エマちゃんだ……!一緒にいるのは…経営学科の同級生の人たちだな。教室で顔見たことある…)
と、エマはじめ経営学科の面々の存在に気付く。
咲は(わたしここでバイトしてるんだ!)って話しかける妄想を一瞬するけれど、まあびっくりするよね……と妄想を消す。
咲(てかエマちゃんたち、まさかお酒……は、飲んでなさそう)よかったーとホッとする咲。
遠くから様子をうかがっていると、
席から「すみませーん」と声が聞こえ、咲は呼ばれる。
エマが咲に「あ、店員さん。その子誕生日らしくて、写真撮ってもらえません? あと飲み物も追加で」と頼み、
咲、固まる。
エマはじめ、経営学科の同級生は誰一人、咲が同じ学科の同級生だと気づいていなさそう。
「はい」とスマホを渡され、「あ……」と一瞬顔が引きつる咲。
が、すぐに笑顔をつくって「そうなんですね、おめでとうございます!」と言う。
咲[そうだよね]
世界がたちまちグレーになる。
咲[エマちゃんとは入学式以来ろくに話せたことないし、経営学科の同級生も同じ教室で顔合わせるくらいで……]
咲[わたしのことなんて知らなくて当たり前だよね]
誕生日で大騒ぎしているエマたち大学生の写真を撮ってあげて、空きグラスを片付ける咲。
モブたちは「経営学科のモブ子がモブ男ともう付き合ってるらしい」とか、
「経営学科1年仲良すぎじゃね!?」と爆笑してる。
咲[仲良すぎ、か……]
咲[ダメだ。わたし、おなじ経営学科なのに……]
咲、目尻に涙が浮かぶ。
すると、咲、ジョッキを盛大に落として割り、お客さんの前で平謝り。
バックに戻ったら「なにやってんだよ!」と洗い物やってる他の従業員のモブ・スタッフAに怒られる。
咲「すみません、あ、洗い物やります……!」
手伝おうとするが、油でぬめった床でツルッと滑って転けてしまい、そのスタッフAに見下ろされる。
スタッフA「もういい。今日は帰れ」とそっけなく言われて、咲帰る。
バリバリ働いてたのに、あきらかに元気を失ってトボトボと歩く。
咲「ただいまー……」
咲が辿り着いたのは、
おどろおどろしいカケアミオーラが漂っているオンボロアパート
咲[ここが現実。わたしには茶色い弁当と、このオンボロアパートこそが、ふさわしいってことよ……]
ムシがわささーっと走っていく。咲は慣れっこ。
ネズミも咲の姿を見て引いている。
咲「ここでも、ひとり。かあ」
四畳半の部屋の真ん中で大の字になる咲。
天井の蜘蛛の巣を見る。
[居酒屋バイトも盛大にポカしたし、明日出勤しづらいな……大学生活あと4年間。やっていけるかな……]
咲「よーし、落ち込んでる場合じゃない!景気づけに、とっておきの鶏もも肉でなんか美味しいごはんでもつくるかー!」
と、拳を突き上げるも、ほろっと涙が出てくる。
咲「でも、今日くらいは泣かせてー……!」
オンボロアパートの隣の部屋には琥珀がいた。
琥珀、驚いて壁を見てる。
琥珀「やっぱり……豪速球女子、花子さんだったんだ」
