〜咲。バイト先のコンビニに向かう途中〜

咲はお母さんのことを思い浮かべる。
~回想。
母「ごめんね咲。大学に行かせてあげられるお金がなくて」
咲キッチンで料理しながら、
咲「もー、その話はいいよお母さん。奨学金決まったし、アルバイトも勉強も、わたしバリバリ頑張るからさ!!」
母「ありがとう……。それにしても、咲の料理はほんとうに美味しいねえ」
咲「彩りさえ良ければね」
ふふふ……と笑い合う。やさしい思い出。
~回想終わり。

コンビニバイトに向かって町の中を歩く咲。

[高校でも、バイトと勉強で忙しくて、ろくに友達もできなかった。]
教室の中でポツンとクラスメイトを眺める、田舎の高校時代を思い出す。
そこにパッと、昨日の魁李のお弁当を食べたときの赤面顔が浮かんで、
咲も顔が赤くなる。
咲[料理はずっとやってきたから、なんだか認めてもらえたみたいでうれしいな。]
咲[それに、男の人にあんな顔されたの、はじめて……]
咲、ポ…とするが、スンと急に表情が能面になる。
咲(ていうか、あの時の私、すごくイケイケじゃなかった!?よかったら食べてみます?とか、積極的すぎ!)
咲(お弁当、すんんんごい茶色かったし!お弁当箱も小学生の時から使ってるパケモンのだし!)
咲(黒歴史だよこれ!恥ず!恥ずい!!!)
わーっと頭掻きむしる。がむしゃらに走り出して、まわりの人が驚いて目丸くさせている。

咲、コンビニバイトに滑り込んで、働く。
おろしている髪をアップにして、汗を拭くために一瞬メガネを外すと、
実は清潔感があって涼しげな印象の顔だちをした咲。

コンビニの店長がチラッと咲を見て、
店長「咲ちゃんコンタクトにしないのー?メガネ外したら印象ぐっと変わるのに。かわいいのにーっ」
 *店長は少し女性っぽい、乙女なおじさん。いやらしさがない。
(かなで)「あー店長それセクハラですよ」
咲・店長「え、そうなの?」
奏「そうなの?って、咲が驚くのかよ」
 *奏は雰囲気イケメン。サブカル系お兄さん。
  咲のことは本当は気に入ってるけど深入りしない。いい距離を保ってくれる人。
咲「コンタクトは高くて……目悪いってほんとコスパ悪いですよねー涙」
奏「……でもオレも咲のコンタクト見てみたいかも」
咲「えぇ? 奏さんもセクハラ?」
奏「ちげーよ。ほら赤とか緑とかオッドアイとか」
咲「信号機にでもさせるつもりですか?」
あほらしーとやれやれ、のポーズをしながら「働きますよー」とレジに行く咲。
奏は少し目で追って「ほいほい」と、隣のレジに着く。

咲が真面目にコンビニバイトをする様子。

場面転換し、
(バイトを終え、)授業になんとか滑り込んで入ってきて、
出席の用紙を「すみません!間に合いました?!」と、教授にもらいにいく咲。

咲[ま、間に合ったー!]
咲[奨学金のために成績は優秀でなければならない……!だから勉強も手は抜けないんですよねー泣]

そんな咲のことをクラスの子たちは、ちょっとクスッと笑ったりしている。
髪もボサボサで、メガネもずり落ちて汗だくの咲を横目で見る。
モブ女「ねーやばくない?(あの子、と咲を指さす)」
魁李「あ?なにが」
魁李は何も気にしてなさそう。
そして魁李の隣で寝ている琥珀。
「あーもう、琥珀君また寝てるー」とモブが言う。
そんな琥珀たちの前の席が空いてたので、座りに来る咲。
琥珀は咲が来たことで起きる。

琥珀「ん?あれ、豪速球少女……」
魁李「あーやっぱそうだよな」
魁李「てかよく覚えてたな、あのシチュエーションで……(1話の、教室からビュンと走りだす咲と、その勢いの風に揺られてる琥珀を回想)」
琥珀「うん……。それに」

咲「すみません」と席の隣の人に会釈してる。
 *隣の人が席に荷物が置いてあったのを避けてくれたので。

琥珀「なんか、あの子の声、聞いたことある……」
魁李が琥珀を見て(ん?)となる。
モブ女たちも琥珀を見てエッ……と青ざめる。
特に、エマはあかさらまにショックそうな顔をする。
なになに、琥珀くんどういうこと?!と群がるモブ女たちと、真顔の琥珀。
エマ「琥珀、あの子と知り合いなの?」
琥珀は「うーん…」と眠そうに欠伸をし、でもジッと咲を見ている。
魁李、そんな琥珀の様子を見て、
魁李(琥珀が人に興味持つなんて、めずらしくね……?)