「え、あれ、さっきの人いいの?」
タイミング的に、翠寧が無視した、みたいになっちゃってるけど。
「いいよ、教えるつもりなかったし」
「え、なんで?」
翠寧の言葉に疑問を持った。
「別に教える必要ないじゃん?」
ええー、そうかな。
私は下の名前まで知っててほしいと思う。
「だから、見つかる前に早く行こ」
そう言って、翠寧は私の手を引いて早歩きでスタスタと足を動かした。
佐野翠寧、めっちゃ可愛い名前だと思うんだけどなあ。
すいね、っていう部分が特に。
めずらしい名前だけど、すっごく可愛い。
駅から出た後は、翠寧が何度も後ろを振り向きながら話し始めた。
「さっきの人誰?和泉学園の人なの?」
「うん、たぶん……?」



