悲劇のセイレーンにささやかな愛を




そう言いながらも笑みが漏れる。

上履き……普通失くさないだろ。



「新しいの買いに行くか」

『いや、それは大丈夫』

「……は?」



なだめるように言うと制され、思わず固まる。

大丈夫って何がだ。
怪我するし、危ないだろーが。



『きっとどこかにあるから。見つかるまで体育館シューズで過ごすし、心配しないで』

「見つかるか?」



今度こそムッとされて、しかも軽くパンチされた。

まぁ今のはさすがに心ないことを言った、と内心謝る。


でも上履きを学校で失くしたなんて、目撃情報とかなんかあるだろ。すぐ見つかるはずだ。

それに妙に引っかかるのが、澪が失くした場所などを一切覚えていないことだ。

最後にどこで履いてたとか、脱いだとか置いたとか。


それを聞くと『金曜日は普通に下駄箱に入れたんだけどな』と首を傾げられた。

なら尚更意味不明だ。

それでも澪がいいって言うなら勝手に買うわけにもいかない。


……俺、もしかして尻に敷かれるタイプか?

なんて一人で悶々と考えながら教室に入った。