それから少し歩いたころ、大和君は立ち止った。
「ごめんね、如月さん。急に連れ出して」
「ううん。大丈夫。ありがとね、助けてくれて」
 急に申し訳なさそうな顔で謝ってきた大和君の顔の前でぶんぶんと手を振る。
 ものすんごく、驚いたけど、助けてもらったのも事実だ。
「じゃあ、ここから、別行動にしようか」
「え?」
 え?どゆこと?
 大和君の発言に、私は驚きを隠せなかった。
「如月さんも、あんまり話したことない婚約者と一緒にいるの、嫌だよね?」
「そんなこと……」
「いや、俺も委員会で、校長先生に挨拶行かないとだし。一回、目立って抜け出したから、もう話しかけられることはないと思うよ」
 またまた、大和君の発言に私は言葉を失った。
 なんてスマートなんだ。なんて気が利くんだ。
 こりゃ惚れちゃうな。このイケメン。
「じゃあ、今までの全部、計算通りだったってこと……?」
「うん、まあ……どうだろうね」
 私の質問に、大和君は頭をかいて、照れ笑いした。
 いやー、慣れてるね。この人。女の子の扱いに慣れてる。
「ああ、俺もう行かないと。いろいろごめんね、如月さん」
「ううん。そっか、ありがとう」
 手を振って去っていく大和君。
 私も手を振り返しながら微笑みかけて……顔を赤くしたように見えたのは、きっと私の幻覚だろう。
 さーて、どうしたものか。朝陽と回るか?いや、今会いに行ったら、絶対いじられるな。
 周りも混乱するだろうし……。
「あれ、あん時の美人さん」
「うわっ……」
 心臓止まるかと思った……。
 振り返ると、そこには、大和君のお兄さんが【2ーA】と書かれた教室の、廊下側の席からこちらを覗いていた。
「美人さんさあ、毎回、同じ反応するよね」
 「よっこいせ」と立ち上がり、私のいる廊下にでてきた大和君のお兄さん。
「すみませんけど……びっくりするんだから、仕方ないじゃないですか」
 あんたが急に話しかけてくるせいだよ……。
 そんなこと思ったって、聞こえはしないんだけど。