いきなりの長文で少し驚いたけど、なるほど……。
 いや、男子校との交流なんだから、男子と話せよ!……と言ってやりたい。
 それか、この子たちにとって、私はもう女子ではないのだろうか。
 まあ、そんなことはどうでもいいとして……どうやって断ろう。
 さすがにね、婚約者ガン無視で他の子と一緒にいるわけにはいかないでしょ。
「如月さん」
 うわ、びっくりした。
 振り返ると、そこにはニコニコスマイルを浮かべた大和君が立っていた。
「急にごめんね、交流会、せっかくだし、一緒に過ごしたいと思って」
 すごいね、大和君、ちゃんと笑えたんだね。
 そりゃそうだろ、って感じだけど、この間はすんごい真顔で、話しかけられたら笑う、みたいな感じだったから。
 それに比べてお兄さんはめっちゃ笑ってたけど……。
 って、失礼だって、私の婚約者は、大和君なんだから。
 どちらにせよ、大和君に救われたことに変わりない。
「うん、そうだね。ごめん、そういうことだから……」
「あなた、氷翠王子とどういう関係ですか?」
 何とかやり過ごそうと試みたけど、無理だった。
 というか王子って……呼び方大分変ってるね?
「えーっと、私たちはただの……」
「婚約者かな」
 『遠い親戚だよ?』と言おうとしたのだけれど、それは大和君の声にかき消された。
 ねえ、それは言わない方がよくない?ねえ?
 「キャー!」と黄色い悲鳴が上がった。運悪く、私たちに視線が集まっていたらしい。
「え、待って、相手の人もイケメンじゃない?」
「本当だ……!ってか、さっきの本当?」
「朝陽姫との組み合わせもいいけど、この組み合わせもBLっぽくていい……!」
「こら!王子に失礼でしょ!」
 そんな声を耳にしながら、『終わったな』と思った。
 大和君?どうにかしてね?ぶっちゃけ話すの初めてなんだからね?
 と、訴えるように大和君を見たけれど……このイケメン、澄ましてやがる。
「じゃあ、行こうか。如月さん」
「う、うん!」
 だめだ、今絶対、性格悪い顔してた……。
 そうして私たちは、悲鳴と視線に包まれながら、体育館を出ていったのでした……。