和泉さんが黙り込んでいることに気づいて、ハッっとする。
 もしかして、和泉さんは嫌なのかな……?
 そりゃそうか、こんな意味分かんない家に……。
「……っやったー!」
 ……は?
 和泉さんは両手を上げて叫んだ。
 その声に、私の脳が一時停止する。
 「やったー!」……?
 つまり、それは、何が嬉しい?
「マジでよかったー……。いてもたってもいられなくて、こっそり見に来ちゃったんだけど……」
 和泉さんは笑顔を絶やさず私のもとにやってくる。
「じゃあさ」
 そのまま、呆然とする私の手を取って言った。
「俺が、氷翠ちゃんと結婚しても、いいってことだよね?」
 思わず見惚れてしまう、不思議な笑みを浮かべた和泉さん。
 その人差し指を自分の口元に当てて、何というか、何というか……。
 ……美しい。
 先ほど冷めたはずの熱がまた顔に戻ってくる。
「ああ、そうだな……」
 和泉さんのお父さんが、頭をかきながら俯いて言った。
 え、えー、いいんですか?お義父さま!?
 そんな、私、幸せすぎて死んでしまうかもしれない。
「じゃ、早速……」
 私が、何の前触れもなくやってきた幸せに浸っていると、和泉さんはその腕を私にくわえさせてきた。
 ガブリ……と。
「む……!」
 突然のことに反応できず、変な声が出た。
「はーい、いいから、吸って吸って」
 和泉さんはニコニコと私の姿を見下ろしている。
 何だよ、そのかけ声……。
 ようやくその意味を理解した私は、恐る恐る和泉さんの血を吸った。
 ……やっっぱり……。
「美味しすぎる……」
 和泉さんは、それでよし、というようにうなずき、お父さんの方を見た。