「ご、ごめんなさいっ……!悪気はなくて、ただ、和泉さんの血に比べると……」
「「和泉……?」」
 ああ、やってしまった。
 もう終わりだ。
 そう思ったのに、なぜか、顔を青くしていたのは、津城ご夫婦の方だった。
「和泉……?ああ、やっぱり……」
「そう、そうだったのね……」
 津城ご夫婦は、二人揃って頭を抱えている。
「あの、どういうことですか」
 お父さんが、普段からは想像できないくらい、低く、単調な声で尋ねた。
「あなたがたが、神の血を継いでいる、【予言の者】は大和君だというから、私どもは信じたのです。これは本当に知らなかったのです
 すか?」
 津城ご夫婦は、肩を抱いて震えだした。
「ご、ごめんなさい……すみません。分かっていたのです、本当は。神の血を継いでいるのは、和泉だと……」
「「「「え?」」」」
 衝撃だった。
 大和君も知らなかったのか、目を丸くしている。
「本当に申し訳ございません。私どもは、ただ、和泉に神社を継いでほしく……」
「昔から、神に通じる力の、強い子でしたから……」
「父さん、母さん!」
 バンッと部屋のドアが開いたかと思うと、そこにいたのは……私が会いたくてたまらなかった人だった。
 ……和泉さん……。
 ごめんなさい。こんな時なのに、あなたに会えたことが嬉しくてたまらない。
「今の話、本当?」
 和泉さんは、確かな足取りで津城ご夫婦に歩み寄る。
 和泉さんも、知らなかったんだ……。
「ああ、本当だ。悪かったな、嘘をついて」
 津城ご夫婦のお父さんの方が、お母さんの肩を支えながら、静かにうなずいた。
「そっか……」
 和泉さんは、今、どんな気持ちだろう……。
 ……いや、ちょっと待て。
 ということは、私の【予言の相手】、【運命の相手】は、和泉さんってこと……?
 顔が一気に熱くなる。
 だ、だって、こんな状況だけど、嬉しいものは嬉しいんだもん。