そして、とうとう契約の日になってしまった。
 今日、私の恋は死んでしまうのだろうか。
 この【運命】によって……。
 悲しくなるので、もう考えないことにしよう。
 今、私は、お母さんにドレスを着せてもらっている。
 いわゆる、【ウェディングドレス】というやつだ。
 この見た目だからな……タキシードの方がよかった……。
「大丈夫よー。私とお父さんの子だから、美形なの。美形は男装も女装も似合うんだからっ」
 って……お母さんには流されたけど……。
「よし、できた」
「おおー」
 お母さんの声に、鏡に映る自分の姿を見る。
 似合わないとはいえ、さすがにウェディングドレスを着るのはテンションが上がる。
 可愛いな……似合わないけど……。
 これ……和泉さんに見てもらいたかったな……。
 なんて、思っても仕方ないんだけど。
「うんうん、似合ってるじゃない。やっぱりお母さんの子だから……」
「お母さん、時間ないんじゃない?」
「あっ」
 『お母さんの子だから~』って言いたいだけだろ、って言いたかったけど、言わないことにした。
 怒ると怖いし。
 私の言葉を聞いて、お母さんは焦って私のメイクをしだした。
「メイク、別にしなくても……」
「もう、遠慮しないで。磨かないとでしょう?お母さんに似て美形なんだから……」
「あ、そうだね。よろしく」
「ちょっと!」
 だめだ、これ以上聞いては。
 メイクを終えて、ピッカピカに仕上がった自分を鏡で見る。
 さすがお母さん。自分磨きとケンカしかしてこなかった人は、やっぱり違うね。
 こんな私でも、ある程度はマシになった。
 もしかしたら……。
「お母さん、契約の儀式って……大和君のお兄さんも来る?」
 もしかしたら、和泉さんにも、見てもらえるかもしれない。