私の誕生日まで、あと3日。
和泉さんの血がおいしすぎて、輸血パックが喉を通らない今日この頃。
私は改めて、契約の手順をお母さんから聞いていた。
「まず、大和君の血をこの器に入れてもらって、それを一口飲むの」
……ぶっちゃけ、出始めから引いた。
『まず、器に入った血を飲むの』って?正気?怖いんですけど。
でも、お母さん経験者だしな……。
怒らせたら怖いし……。
「で、それが本当に予言の相手だったら、ものすごくおいしく感じるんだとか?」
「分からないんだ……」
「そうねぇ、お母さん。人間だし」
「そうだね……」
お母さんも、予言されたものとしてお父さんに嫁いできた。
昔は、向かうところ負けなしのヤンキーで、その割にものすごく美人だったもんだから、そりゃ大変だったらしい。
今は……もう面影もないけれど……。
「それで、一口飲んだ後に、今度は氷翠が同じ器に血を垂らすの」
「飲みかけの血に……?」
「そう。それで、それが予言の相手だったら、血が混じり合って、光るんだとか?」
「それも分かんないの?」
「だって、手を切った痛みしか覚えてないもの。地味にね、ピリッとね……」
「……」
何だろう、もう、すでに嫌だな。
話がグロデスクだし……お母さんの話も曖昧だし。
「それから、この超特別特注品の指輪を器につけて、血の色に染まった指輪をお互いにつけるのよ」
「ねえ、せめてその指輪だけは、なしになんない?」
さすがに、血に浸した指輪をつけるのは……想像もしたくない。
「えー、それが盛り上がるんじゃない。ほら、見て。血の色といってもね、その人たちによって色が変わるの。綺麗な茜色でしょ
う?」
そう言って自分たちの結婚指輪を見せてきたお母さん。
綺麗だけどさぁ。
そうじゃなくて……。
「心配しなくても、なるようになるわよ。【予言の相手】は、【運命の相手】ですもの」
お母さんの強く、芯の通った声が告げる。
それは、お母さんが今まで、この【ヴァンパイア】という得体のしれない一族の中で生き抜いてきた証拠だ。
でもね、お母さん。
今の私は、その言葉を信じたくないんだ。
運命じゃなくて、本当は違うんじゃないかって、思いたいんだよ……。


