ふっ、と自虐的な笑みを浮かべた和泉さん。
 確かに、その選択は極端かもしれない。
 それでも、和泉さんが大和君を思っている気持ちは変わらないのに……。
 「コツン」と食べ終わったたこ焼きのトレイが落ちてしまった。
「あ、ごめんなさい……」
「んーん、大丈夫?」
 和泉さんがそう言って手伝ってくれる。
 トレイと一緒に他のゴミもまとめていたから、拾うのが大変だ。
「……ありがとね」
「え?」
 和泉さんの言葉に顔を上げた。
 その時……。
「ちゅっ」
 和泉さんと私の唇が、重なった。
 突然のことで反応できなかった。
 でも、状況を理解するにつれて、顔が熱くなる。
「ごごご、ごめんなさいっ……!」
 焦って、和泉さんから距離を取る。
 私は、な、なんて破廉恥なことを……!
 しかも、婚約者のお兄さんと……!
 でも、なぜだろう。不思議と嫌ではなかった。
 何なら……って!そういうところよ!如月氷翠!
「い、いや、俺こそごめん。急に話しかけて……」
 む、むむむ!?
 何か、和泉さん、照れてない?
 顔を赤くして、交流会の時と同様、手で顔を赤くしている和泉さん。
「さ、さっさと拾っちゃおうか」
「はい……」
 どうしてだろう……。
 あなたといると、胸が高鳴って。どうしようもなく苦しくて。
 それでも、幸せで。

 そっか、私、恋してるんだ。

 あなたに、和泉さんに。
 好きになってしまったんだ、婚約者のお兄さんを。
 絶対に、好きになっちゃいけない人を。
 この恋を、世間は、【禁断】と、呼ぶのだろうか。