「はー……。面白い。まさか、そんなに満足してもらえるなんてね」
 驚いて顔を上げると、和泉さんは、見たことないくらい清々しい表情をしていた。
 どうして……この人は、こんなにも私を受け入れてくれるのだろう……。
「んー、でもさ」
 その声に、僅かな緊張感を覚える。
 やっぱり、きもいって言われるのかな。
「俺だけ、血ぃ吸われて、不公平じゃない?」
「……へ?」
 つまり、どゆこと……?
 まったく和泉さんの意図が読めない。
「だから、こうしたら、公平じゃない?」
「こ、こうしたら、とは……」
 どうしよう、今度は……脅される!?
「血、吸った代わりに、俺と文化祭回ってよ」
「……はひ?」
 予想もしない発言に、脳が一度ショートする。
 ん?つまり……?
「私と、文化祭、回りたいってことですか……?」
 まさか、ね?
 弟の婚約者である私と……ね?
「そーゆーこと。てか、この前も言ったよね?」
 ガビーンと、雷が落ちたような衝撃だった。
「で、でもですよ?私、大和君の婚約者ですし、大和君と……」
「んー大和?あいつ、また委員会だよ?」
 衝撃発言を連発するな……この人。
 というか……。
「大和君、真面目すぎません?」
「ん、まあね。大和、生徒会役員だし」
 当然のように私に言い放った、和泉さん。
 えー、いやいやいやいや……。
「もう、エリートじゃないですか……?」
 もう、【尊敬】という言葉しか出てこない。
 神か?
「そーだよねー。大和、ずっと頑張ってるの」
 やっぱり、和泉さんが認めるくらい、大和君は頑張っているのだろう。
「……1人で、ね……」
 え……?
「何か、言いました?」