「ちょっと、それは反則……」
 綺麗な指の隙間から、ちらりとこちらを窺ってくる和泉さん。
 何、急に可愛い反応してくるんだけど……。
「いや、ごめんなさい。そんな反応すると思わなくて……」
「俺こそごめんね。ちょっと、このことは忘れてよ」
 無理でしょ。こんな可愛いの忘れられるわけないでしょ。
 でも、そんなこと言ったら、仕返しをされそうなのでぐっと口をつぐむ。
「ああ、じゃ、こうしようよ」
 和泉さんはいきなり元気を取り戻して、ニコニコと話し始めた。
 ……何か、面白くないな。
「俺さ、聞いちゃったんだよね」
 え、何を……。
 和泉さんの言葉に、少し警戒する。
「今年の文化祭さ、俺らの高校、一緒にやるらしいよ」
「へ?」
 思いがけない言葉に、気の抜けた返事をしてしまう。
「ぷっ。氷翠ちゃんさー、驚いた時の反応がさ、いろいろあって面白いよね」
「何ですか、面白いって」
 「いやー、ごめん」とわけわからない謝罪を口にしながら、ケラケラと笑う和泉さん。
「それで本題。だからさ、氷翠ちゃんが望むなら、ね?一緒に文化祭、回らないかなー……」
「結構です」
 あまりの即答に、「えー」と口をとがらせる和泉さん。
「それって、私にメリットあるんですか?からかっているなら、やめてください」
 本当に、私以外の女子だったら、引っかかってくれたでしょうけど。
 慣れてんだよなあ。このイケメン。
「からかってないよ」
 急に聞こえた、その低い声。
 その中には、少し怒りも含まれているような気がする。
 和泉さんは「ふー」と息を吐きだし、手を首の後ろに当てた。
 そして、ぞっとするほど美しい笑みを浮かべ、私を見つめた。
「俺は本気だよ?氷翠ちゃんが望むなら、とか言ったわりには、俺が一緒に回りたいだけだけど」
 さっきみたいに「氷翠ちゃん」と呼んだだけなのに、今までで一番、胸が高鳴った。
「で、どうなの?氷翠ちゃんは。俺と回りたいの?回りたくないの?」
 そんなの……。
「そ、それは……」