最高の娘

今でも思い出します。
あのテントの中で、あの人が最後に流した涙を。

私には本当の母親がいませんでした。
誰にも愛されず、ずっと一人で生きてきた。
愛情なんて、テレビの中のものだと思っていました。

だから、最初は怖かった。
あの人が近づいてくるたび、気持ち悪かった。
母ぶってくるのが、気味悪くて仕方なかった。

でも、あの人は違いました。

私の持ち物に虫が入っていたとき、誰よりも先に処分してくれた。
眠れない夜に手を握ってくれた。
私が泣いたとき、一緒に泣いてくれた。

歪んでいた。狂っていた。
でも、確かに私にだけは、優しかった。

きっとあの人は、本当に「母」になろうとしていたんだと思います。

そして私に、教えてくれました。

この世界には「正しい愛」ばかりじゃないってこと。
人を傷つける形の愛もあるってこと。
でも、それでも「誰かを想う心」は、確かに存在するのだと。

あの人は──

私にとって、
最後の、「母」でした。