はじめまして、好きです。

 春の匂いがする風が、少しだけ制服のスカートを揺らす。
 でも、私はそれを感じるふりをしながらスマホの携帯を眺める。

 新学期?クラス替え?そんなのどうでもいい。
 誰が私の隣になろうと、私には関係ないから...

 だって——もう誰にも、期待しないって決めたから。

  その時だった。

 ガラッ、とドアが空いて、

 「.....はじめまして、好きです。」

  黒板の前に立つ、まだ名前も知らない転校生がまっすぐに——私を、見ていた。

 教室がざわつく。

 「えっ告白?!」
 「澪に告白?」

 ざわめきの中、私の友人のひとりが——

  「澪!あんたいつの間にイケメン捕まえてたのよ!」

 と、からかい気味に言ってきた。

 私は肩をすくめて、
 「イケメンを捕まえたおぼえはないよ。私の過去知ってるでしょ?」

 とだけ返す。
 本当に、あの転校生と会ったことなんて一度もないし、
 もちろん、見たこともない。

 私は嘘をついてない。それだけは、顔に出しておいた。

 そのとき——

 黒板の前にいた転校生が、無言でこちらに向かって歩き出す。

 「あんた!名前は?」

 .....は?
 思わず聞き返しそうになったけど、無視するのもどうかと思って答える。

 「一ノ瀬 (いちのせみお)...で、あんたは?」

 転校生は、ニッと笑って、まっすぐ目を見つめながら言った。

 「俺は、九条 颯真(くじょうそうま)
 「澪、俺はお前のことが好きだ。」
 「付き合ってくれ。」

 一瞬、教室の空気が凍った。
 私はと言うと─
 「は?無理。」

 その一言で済ませた。
 でも、彼はめげる様子もなく、むしろ笑顔で——

 「振られたー、けど俺諦めないから。絶対振り向かせるから。これからよろしくな。」

 と言ってのけた。

 私はその顔を見ながら、心の中で呟いた

 (...これから、めんどくさそうだな)

 まさか、
 新学期早々に、名前も知らない相手から告白されるなんて。

 しかも断ったのにめげないとか─ほんと無理。

 でも、
 この時私はまだ知らなかった。
 この"諦めない男"が、
 私の閉じた心を、少しずつ、少しずつこじ開けていくことを。

 ─続く