「あ、清春! 花火上がる――」

 そっと、明日香に近づいた。

 ドーン!!


 夜空に、大輪の花火が咲いたと同時――、明日香の頬にも、小さな花火が咲いた。


 ……明日香が、顔を真っ赤にしてこっちを向く。
 それが可愛くて、僕は思わず笑みをこぼした。顔が赤いのはお互い様だ。

 僕達は、次々に打ち上がる花火と胸の音を聞きながら、最後まで見届けた。


   *  *


 ……帰り道。
 段々と人が少なくなっていく。

 もう少しで清春と、この手を離すことになる。
 別に、一生会えなくなるわけじゃないけど……できれば、離したくない。

 でも、自分の気持ちとは裏腹に、あっという間に家の前に着いてしまった。

「……じゃあ、また今度」

 清春が、名残惜(なごりお)しそうな表情で手を離す。


 ――勇気を出すなら、今だ。


「清春っ」

 突然大きな声を出したので、清春が「どうしたの?」と驚いている。

「また、勉強でもいいし、そうじゃなくてもいいから……会おう?」

 清春の瞳が、夜空の星のようにキラリと光る。
 微笑みながら嬉しそうに目を細めて「うん」と返事をしてくれた。

「じゃあ、またね」
「――うん、またね」

 美しい星空を見上げながら、それぞれ手を振った。