「うん。でも私、かき氷は最後がいいし……あ」

 明日香がぐるっと辺りを見回して、ある屋台を指差す。

「とりあえず飲み物買う?」

「いいよ!」

 屋台に近づいて、氷と水がたっぷりはいった箱の中にある飲み物を見る。

「何がいいかな?」

「僕はラムネ!」

「……ラムネっておいしいの?」

 明日香の発言に、僕はピタッと動きを止めた。

「ラムネ、飲んだことないの!?」

「ない。炭酸苦手だし」

「夏祭りと言えばラムネだよ」

「……おいしい?」

「僕は好き!」

 ふーん、と屋台のラムネを見る明日香。

「すみません、ラムネ二つ下さい」

「えっ? 明日香?」

「あいよ、合わせて200円な」

「有難うございます」

 お金を受け取った屋台のおじさんが、ラムネを二つ出す。
 明日香がそれを持って、動揺(どうよう)する僕を無視して引っ張る。

「ちょっ、僕はラムネ好きだけど、炭酸苦手なんじゃないの?」

 日陰まで歩いて、ラムネを手渡される。

「……だって、清春が好きなんでしょ? 清春が好きなら飲んでみたい」
「えっ、え!?」

 動揺する僕をよそに、明日香は(ふた)を取って(びん)に口をつけた。
 とりあえず僕も、ごくごくとラムネを飲んだ。

「っふー、おいしぃ~!」

 冷えたラムネって、やっぱりおいしい。

「っ、ごほっ!」

「明日香!?」