”夏祭り、行かない?”

(お、押してしまった……!)

 私はスマホをひっくり返して、恥ずかしさから枕に顔を(うず)める。

 ……今私が夏祭りに誘った彼――清春(きよはる)とは、付き合ってから学校以外で会うことはほとんどない。唯一会うとしたら、学校後に図書館で一緒に勉強するときくらいだ。

 つまり、初めてお互い私服でお出かけ……いわゆる『初デート』のお誘い。

(清春、予定空いてるかな)

 そんなことを考えていた時、ピコン! と通知音が鳴った。

 ”いいよ! 楽しみ!!”

 ニコニコと笑顔を浮かべている清春が想像できて、ホッと息をついた。

 ”じゃあ、五時に集合で”

 ”うん。明日香、また今度ね!”

 会話が終わって、今度こそスマホの電源を切ってベットの上に置く。

「~~っ」

 はぁ~~っと、長い溜息をつく。
 ……胸がじんわりと暖かくなる。嬉しくて思わずニヤけそう。

 いけない、と思いつつも、しばらく頬の緩みが(おさ)まらなかった。


   *  *


 夏特有の暑い空気が、頬を撫でる。
 沢山の屋台が並んでいて、当たり前だけど、会場の中心の方では人混みができていた。

 僕は比較的人が少ない日陰で、ラインを確認する。

 ”もう着くけど、今どこいる?”

 この文章は数分前に明日香から来たようだ。
 文字を打って、送信ボタンを押す。