帰り道、薔薇色に染まったのは


 ベンチに着いたらすぐに座って、鞄の中のチョコを確認する。

(……うん、崩れたりしてない)

 一旦ホッと息をついて、カバンを閉めようとした瞬間――。

 ヒヤッ

「っ!?!?」

 首に冷たいものが触れて、声にならない悲鳴を上げる。

「……っははは! 今度は引っかかった!」

 後ろをふりかえると、お腹を抱えて笑っている清春の姿が。
 私は赤くなった顔を隠すように、ぷいっとそっぽを向く。

「もう口聞かない」

「っえ!? それ困る!」

 ちらっと清春を見ると、顔を真っ青にしてアワアワしてる。
 その姿が可愛くて、盛大に吹き出した。

「なんで吹き出すのっ!?」

「ごめんごめん、冗談だから」

「え、冗談!? 本当に?」

「うん」

 よかった~、と安堵している清春。
 その姿にクスクス笑いながら、「そういえば」と話を切り出す。

「今日、バレンタインでしょ? ――はい」

 そのまま清春に手作りのチョコクッキーを差し出す。
 清春を見ると、顔を真っ赤にして硬直してる。

「大丈夫? 顔真っ赤だけど」

「……っ、くれると思ってなかった……!」

 ヤバい、嬉しい、ありがとう、と連呼する清春。

「え、明日香って料理できるの?」