真夜中のブラックkiss

涼弥にとっては本当にいい迷惑だと思う。彼にとって私はただの同期だ。それなのに私の身勝手にこじらせた片想いのせいで随分と迷惑を被っている。涼弥が本音を言えば心底面倒臭い、それに尽きるだろう。

私はまた泣きそうになってきて、そんな顔を見られないように窓に顔を向けた。


(今日でもう涼弥に迷惑をかけるのやめよう)

(せめて25歳の幕開けに今までのダメな自分から何か一つでもお別れしたい)

車内は静かで涼弥は黙々とハンドルを握っている。

「……気持ち悪くない?」

信号待ちで彼が私に視線を向けた。

「大丈夫。ありがと」

「今から、ちょっと寄りたいとこあるけどいい?」

「あ、うん……いいけど」


どこへと聞こうかと思ったが、涼弥との深夜のドライブは今夜で最後だと思うとどこでも良かった。本当はこのまま家に着かなけれいいのにと馬鹿みたいなことが何度か頭をよぎっていたから。

涼弥が高速に乗ると前を向いたまま口を開く。

「眠いだろ、ついたら起こすから」

「でも、運転してもらってるのに……なんか」

「深夜に迎えに来させんのに、そこは遠慮すんのかよ」

「仰る通りで」

涼弥が面白げに口元を緩める。

その意地悪な横顔を見つめながら私はオーディオを指差した。

「どこのバンド?」

私が車に乗せてもらう時、涼弥は決まってこのバンドの曲を流している。