真夜中のブラックkiss

「──なんで好きに変わったんだろうな」

(……え?)

一瞬、聞き間違えたのかと思った。

「い、ま……なんて……?」

「好きだよ、祭理が」

真剣な瞳で私を見つめる涼弥の言葉に何度も瞬きしながら、意味を理解しようとするのに頭の中は真っ白だ。

「正直、居心地いいじゃん。俺らの関係」

「う、ん」

「でもいつからか祭理をただの同期として見れなくなった」

「嘘……」

「嘘ついてどうすんだよ」

涼弥が困ったように笑う。

「けどさ、(こく)ったところで祭理は迷惑でしかないだろうなと思ったし、何より俺から今の関係を壊すのが嫌だった」

「待って。だって……涼弥、私に彼氏作らないのか聞いたり、それに好きな子がいるって」

「祭理に彼氏ができたら諦めようと思って聞いた。あと好きな子って言うのは祭理」

「ほっとけない子って……」

「酔って終電逃してる祭理、ほっとけないだろ」

涼弥がふっと笑うと、私の頭をポンと撫でた。

「泣くなって」

「だって……ずっと……私だけだと思って……」

私はマスカラが取れるのも構わず涙を手の甲で拭う。

「大体、俺は金曜の夜に、ただの同期が終電逃したからって迎えにいくほど暇じゃないからな」

涼弥の指先が私の額をコツンと突く。

これが酔い潰れて眠ってしまった夢の中ならもう少しだけ覚めないでいてほしい。