「実萌!いこ」
「はーい」
「なあんだ。前みたいに“うゅ”て言うかと思ったのに〜」
「寝起きでもないと、あ、あんなゆるゆるの醜態晒せないよ・・・・・・」
会話中、グラスからお茶をこぼす音が聞こえた。
「お母さん!?」
「みみ、実萌・・・・・・なにかあったの?その・・・・・・椿くんと。ふ、雰囲気が違うわよ?」
「そっ、そうなのかな・・・・・・っ」
そういえば、言ってなかったっけ。
でも、面と向かって言うことでも無いような・・・・・・それに、恥ずかしい。
「あ・・・・・・付き合うことになりました」
あっさりと告げたつーくん。
その言葉に、お母さんのまん丸の目から、きらきらと輝きが溢れ出す。
「み、みみみ実萌・・・・・・つ、椿くんと、付き合っ・・・・・・!きゃーっ、嬉しい・・・・・・もう駄目かも・・・・・・」
ええ・・・・・・そんなに・・・・・・っ?
「でも、これじゃ学校行けないよ・・・・・・お母さん、立って!」
「はぁい・・・・・・」
っふふ。なんだかお母さんが子供みたい。

「いってきます」
そう言って予鈴の時間を思い出す。
あれ・・・・・・今って・・・・・・!
「急ぐねっ!」
学校へ駆け出す。
「ちょっ、実萌!」
慌ててついてくるつーくんだけど、つーくん足速いもん。ちょっとくらい走ってもいいよねっ?
だっ、と、なだれのように校門に飛び込む生徒多数。
「間に合ってよかった・・・・・・」
教室の扉を開くと、いつもの女の子に混じって、男の子も私を取り囲んだ。
「お、おはようございます」
お辞儀をすると、男の子が私に近づいてきた。
「ねえ、野上さんって、好きな人とかいるの?」
えっ・・・・・・好きな人・・・・・・るっくん・・・・・・じゃなくて、つーくんだっ!

「ちょっと、実萌を誑かさないでもらえる?つーか観察眼の欠片もないのかよ?俺が付き合ってるっつーの」
「「えっっ!?」」
「「はああ!?」」
「つーくんっ、みんなびっくりしてるよっ・・・・・・」
「だってさ、こいつら・・・・・・」
不満げなつーくんを落ち着けて、周りを見る。
「波多野くんってなんか・・・・・・性格変わった?」
あっ・・・・・・。
ばれちゃってるよ、つーくん!
「変わってねーよ。元からこうだし」
ど、堂々としてるっ・・・・・・!
でも、つーくんが批判されたらどうしよう・・・・・・。
「ワイルド?」
「かっこいいっ!」
あれ・・・・・・意外と好評?まぁ、つーくんだもん、当然かな?