「今日は早いし人も多くて危ないから、椿(つばき)くんと一緒に行きなさい。お母さんが呼ぶから」
「つーくん?迷惑じゃないかな?」
波多野(はたの)さんの家は隣でしょ。通学するのが一人から二人になるだけ。大丈夫大丈夫♪」
確かに、私野上(のがみ)実萌(みも)の家の隣には、波多野の表札がついた家がある。
その家の住人である幼馴染のつーくんは、大人しくって可愛かったけど・・・・・・
今じゃのんびりしすぎて話せてないんだ・・・・・・うう・・・・・・。 
「それはそっか・・・・・・って、なんでお母さんそんなにノリノリなの?」
「決まってるじゃない♪推しカプがみもツバだからよ♪」
「推しカプって・・・・・・みもツバってことは、私とつーくん?付き合ってないけど・・・・・・それに、ガクこえはどうしたの?」
ガクこえが、お母さんの推しカプだったはずだけど・・・・・・二.五次元の。
「ふふっ。ちょっと思ってたのと違ったっていうか〜。関係変わって、やんなっちゃったの」
「ふーん。じゃあ連絡がつくまで部屋にいていい?」
「いいわよ〜」

ほんと、お母さんのカップリング愛には困っちゃうよ・・・・・・。
まぁ、私の趣味も、お母さんの遺伝なのかな・・・・・・?
クローゼットを全開にすると、推しキャラのグッズが所狭しと並んでいる。
そう、本のキャラを推している私からすれば、三次元とか二.五次元とかと比べて二次元はグッズも少ない。
行き先に本を何冊も持っていくわけにも行かないから・・・・・・グッズを手作りしちゃったのです♪
ふふっ、この巻は何回読んでもるっくんが尊いよぉ・・・・・・可愛すぎるぅー・・・・・・っ。
るっくんこと松野(まつの)瑠璃人(るりと)くんは、すっごく可愛いんだけど、びっくりするくらい頭がいいんだよ。
だからいろんなところで賞とかいっぱいとっちゃうし、その上音楽も得意なの!
自己肯定感満載の子に見えるんだけど、運動が人並み以上にできないことに悩んでる繊細なとこもあって・・・・・・。
とっても可愛いよね!

「実萌ー!おいで〜」
「はーい」
焦げ茶の、外ハネショートだから・・・・・・結んだりしなくて良いからさっと出れて、楽で嬉しいんだ。
って・・・・・・あっ、つーくんだ!
「行くぞ」
「うん。お母さん、いってきまーす」
「いってらっしゃーい♪」
お母さんの笑顔を背に、つーくんが首を傾げる。
「なんでお母さんあんなご機嫌なんだ?なんか変なことでもしてたの〜?推し活とか〜」
あれ、つーくん口調・・・・・・。ま、いっか。
「推しカプが見れたからみたいだね」
ちょっと頭痛がしてきた・・・・・・お母さんのテンションも困りものだよ。
「推しカプ?」
「うん・・・・・・推しのカップリングのこと。私とつーくんのことだって」
「え・・・・・・つまり、お母さんは、俺のことちゃんと認めてくれてるってことか?」
認める・・・・・・?っていうか、今、俺、って言った?
「お、俺?つーくん一人称それだった?口調も・・・・・・」
「えー?どっちでもいいだろ。みーも?細かいことは気にしねーの。いい?」
「ふーん・・・・・・ちょっと雰囲気変わったね。ワイルドっていうか・・・・・・肉食?あっ、そういうのって、ロールキャベツ男子って言うんだよ」
「うげ・・・・・・キャベツ・・・・・・実萌ヒドいだろ、それは。意地悪よくない」
「ふふっ。そうだった、つーくんって意外と好き嫌い多いんだったね」
「多くねーし。フツーなんだよ、フツー!てか、そんなに言うなら言ってみろよ、俺の好きなものと嫌いなもの」
「分かったっ!嫌いなものはキャベツ、ナス、ピーマン、ゴーヤ、きゅうり、ハム、きのこ、卵、海鮮、和菓子・・・・・・だっけ?
それでっ、好きなものはー・・・・・・お肉、洋菓子、コーヒー、わたあめ、焼きそば・・・・・・あってる?」
「だいたいあってる。でも好きなのいっこ足りないのがあるんですけど〜?やっぱ知らないんだ〜」
えっ・・・・・・な、なんだろ・・・・・・うーん・・・・・・。
にこにこしてるとこを見ると、私が知ってるものなんだろうけど・・・・・・。

「実萌のこと」
「ふぇっ!?好きなものが・・・・・・?うそぉ・・・・・・」
「ほんとだし!あははっ、実萌かーわい♪」
にししっと笑うつーくんには逆らえず、赤い顔を隠すように下を向く。
ふ、不可抗力だっ!
やっぱり、いっつも大人しかったのにワイルドになっちゃって・・・・・・ほんとにロールキャベツだ・・・・・・っ。