「ね、眠れなかった……」
次の日。目覚ましが鳴るよりもずっと早い時間に布団から出る。
眠れなかったその理由は、もちろんユウくん。ユウくんは今、ベッドのすぐ側にある押し入れの中にいるはず。
結局ユウくんは、この押入れの中に布団を敷いて寝ることになったの。同じ部屋で布団を並べて寝るなんて、いくらなんでも恥ずかしすぎるもん。
けど押し入れの中でも、すぐ近くにユウくんがいると思うと、緊張して眠れなかったの。
「ユウくん、起きてる?」
押し入れに向かって声をかけると、すぐにユウくんの声が聞こえてきた。
「藍? 起きてるよ。もう朝?」
それと同時に、押し入れの扉をユウくんの手が突き抜けてくる。
ユウくんの体は扉もすり抜けるから、出入りする時はこんな風になるの。
幽霊ならではのビックリな光景。だけどユウくんの頭が出てくる直前、とても大事なことに気付いた。
「あっ────! ま、待って!」
とっさに叫ぶと、ユウくんの動きが止まる。
両腕はほとんどこっちに出てきているけど、顔はまだ扉の向こうだ。
「どうかした?」
「ご、ごめん。もう少しだけ、中に入っててもらっていい?」
「──? いいけど」
お願いすると、ユウくんは素直に押入れの中に引っ込んでいく。よ、よかった。
「ほ、本当にごめんね。もう少しだけ、中で待ってて」
それから、そばにある鏡で自分の姿を見る。
今の私の格好は、シワの寄ったパジャマに、洗ってもいない顔。それに、寝癖がついてクシャクシャになった髪。こんなの、絶対に見せられないよ!
素早く部屋を出て、洗面所で顔を洗う。それが終わったら、また部屋に戻って制服に着替える。
押し入れの扉一枚を隔てたところにユウくんがいると思うと着替えるのにも緊張するけど、モタモタなんてしてられない。
意を決してパパッと着替えて、近くにある鏡の前で、おかしいところはないか何度もチェック。
ようやく、またユウくんに声をかけた。
「もういいよ。待たせてごめんね」
するとさっきと同じように、押入れの扉をすり抜け、ユウくんが出てくる。
今度はちゃんと、体全部が出てきた。
「おはよう、藍」
理由も言わずに待たせちゃったのに、それには何も言わずに、爽やかな顔で朝の挨拶をする。
ちなみにユウくんの格好は、寝る時も今も、昨日と同じ学校の制服だ。
服もユウくんと同じく実体がないから、汚れることもシワが寄ることもないらしい。
「おはよう、ユウくん。ごめんね、待たせて」
私も、ユウくんに朝の挨拶をする。
だけど何だか、早くも一日分の疲れを体験したような気がした。
それから二人揃ってリビングに行くと、お母さんがテーブルの上に朝ごはんを並べていた。
「お母さん、おはよう」
「おはよう。あれ、今日はもう着替えてるの? いつもなら、まだ寝間着のままでしょ?」
うっ! それ、わざわざ聞く?
確かにいつもは、朝ごはんの後に学校の制服に着替えるよ。けど、ユウくんの目を気にして着替えましたなんて、お母さんには言えない。
恥ずかしくて、ユウくんにも聞かせられない。
(こんなことなら、ユウくんは部屋で待っててもらえばよかった)
そもそもよく考えると、ユウくんはご飯も食べないんだし、ここに来る必要なかった。
さらに今度は、お父さんがやって来て、言う。
「おや、もう着替えてるなんて珍しいな。髪だって、普段ならまだ寝癖だらけなのに」
「~~~~~~っ!」
どうしてそんなこと言うの!
ユウくん、今の聞こえてたよね。私が普段寝癖だらけだってこと、聞いちゃったよね。
声も無くテーブルの上にうつ伏せる私を見て、お父さんとお母さんは、何事かと顔を見合わせていた。
次の日。目覚ましが鳴るよりもずっと早い時間に布団から出る。
眠れなかったその理由は、もちろんユウくん。ユウくんは今、ベッドのすぐ側にある押し入れの中にいるはず。
結局ユウくんは、この押入れの中に布団を敷いて寝ることになったの。同じ部屋で布団を並べて寝るなんて、いくらなんでも恥ずかしすぎるもん。
けど押し入れの中でも、すぐ近くにユウくんがいると思うと、緊張して眠れなかったの。
「ユウくん、起きてる?」
押し入れに向かって声をかけると、すぐにユウくんの声が聞こえてきた。
「藍? 起きてるよ。もう朝?」
それと同時に、押し入れの扉をユウくんの手が突き抜けてくる。
ユウくんの体は扉もすり抜けるから、出入りする時はこんな風になるの。
幽霊ならではのビックリな光景。だけどユウくんの頭が出てくる直前、とても大事なことに気付いた。
「あっ────! ま、待って!」
とっさに叫ぶと、ユウくんの動きが止まる。
両腕はほとんどこっちに出てきているけど、顔はまだ扉の向こうだ。
「どうかした?」
「ご、ごめん。もう少しだけ、中に入っててもらっていい?」
「──? いいけど」
お願いすると、ユウくんは素直に押入れの中に引っ込んでいく。よ、よかった。
「ほ、本当にごめんね。もう少しだけ、中で待ってて」
それから、そばにある鏡で自分の姿を見る。
今の私の格好は、シワの寄ったパジャマに、洗ってもいない顔。それに、寝癖がついてクシャクシャになった髪。こんなの、絶対に見せられないよ!
素早く部屋を出て、洗面所で顔を洗う。それが終わったら、また部屋に戻って制服に着替える。
押し入れの扉一枚を隔てたところにユウくんがいると思うと着替えるのにも緊張するけど、モタモタなんてしてられない。
意を決してパパッと着替えて、近くにある鏡の前で、おかしいところはないか何度もチェック。
ようやく、またユウくんに声をかけた。
「もういいよ。待たせてごめんね」
するとさっきと同じように、押入れの扉をすり抜け、ユウくんが出てくる。
今度はちゃんと、体全部が出てきた。
「おはよう、藍」
理由も言わずに待たせちゃったのに、それには何も言わずに、爽やかな顔で朝の挨拶をする。
ちなみにユウくんの格好は、寝る時も今も、昨日と同じ学校の制服だ。
服もユウくんと同じく実体がないから、汚れることもシワが寄ることもないらしい。
「おはよう、ユウくん。ごめんね、待たせて」
私も、ユウくんに朝の挨拶をする。
だけど何だか、早くも一日分の疲れを体験したような気がした。
それから二人揃ってリビングに行くと、お母さんがテーブルの上に朝ごはんを並べていた。
「お母さん、おはよう」
「おはよう。あれ、今日はもう着替えてるの? いつもなら、まだ寝間着のままでしょ?」
うっ! それ、わざわざ聞く?
確かにいつもは、朝ごはんの後に学校の制服に着替えるよ。けど、ユウくんの目を気にして着替えましたなんて、お母さんには言えない。
恥ずかしくて、ユウくんにも聞かせられない。
(こんなことなら、ユウくんは部屋で待っててもらえばよかった)
そもそもよく考えると、ユウくんはご飯も食べないんだし、ここに来る必要なかった。
さらに今度は、お父さんがやって来て、言う。
「おや、もう着替えてるなんて珍しいな。髪だって、普段ならまだ寝癖だらけなのに」
「~~~~~~っ!」
どうしてそんなこと言うの!
ユウくん、今の聞こえてたよね。私が普段寝癖だらけだってこと、聞いちゃったよね。
声も無くテーブルの上にうつ伏せる私を見て、お父さんとお母さんは、何事かと顔を見合わせていた。


