「ご、ごめん……」
　睨むように私たちを見る三島。大事な話をしてたのにこんな能天気なことしだしたんだから、怒るのも当然だよね。
　もっと真面目に考えないと。
「えっと……それじゃあ、どうすればいいんだろう？」
　三島なら知ってるかな？　なんて期待をしたけど、三島も腕組みしながら悩んでた。
「そんなの、俺だってわからねえよ。成仏させるのが一番だとは思うけど、生きてる時にやりたかったことってないか？」
　生きてる時の未練を晴らすっていうのが、幽霊が成仏する時の定番だ。
　だけどユウくんは、少し困った顔をする。
「無くはないかな。けど、今さらどうにかできるようなものじゃないんだ」
「そうかなのか？」
「ああ。というわけで、その方法は難しい」
　やりたかったことって、何なんだろう。
　気になったけど、ユウくんはハッキリ言ってくれなくて、なんとなく聞かない方がいいのかもって思った。
　けどそうなったら、いよいよお手上げ。どうすればいいのかわからず、しだいにみんな口数が減ってくる。
　けどそんな中、しばらく黙ってたユウくんが、遠慮がちに口を開いた。
「あのさ。本当に、今すぐ成仏しなきゃダメなのか？」
「お前、なに言ってるんだよ!?」
　思わぬ言葉に、三島が目を丸くする。
　私だってそう。だって、成仏しなきゃダメだから、こうして考えてるんだよね？
「俺だって、このままじゃダメっぽいのはわかるよ。けど、今はまだ問題なんて起きてないだろ」
「そりゃ、まあ……」
　それは、私も思った。
　今のところ、幽霊になったユウくんがいるから困るなんてことは、何もない。
「どのみち、成仏する方法はわからないんだ。だったら、とりあえずはこのままで、ゆっくり探していけばいいんじゃないか？」
　そうなのかな？　幽霊のことなんてよくわからないけど、ユウくん本人がそう言うなら、そうなのかもって思えてくる。
　三島は納得できない感じでうーんと唸っていたけど、諦めたように言う。
「確かに、成仏させる方法がないんじゃ、しばらくこのままでいるしかなさそうだな」
「本当!?」
　思わず、弾むような声が出る。
　すると三島は、私とユウくんを見ながら、付け加えるように言う。
「言っとくけど、もし成仏できそうな方法が見つかったら、すぐに試してみるからな」
　やっぱりそうだよね。
　それは、十分わかってるつもり。それでも、まだユウくんと一緒にいられると思うと、少しだけ嬉しかった。
　ユウくんも、ホッとしたように呟く。
「良かった。本当は、もう少しだけ藍のそばにいたかったんだ」
「ユウくん……」
　その言葉にドキリとしたところで、下校時間を告げるチャイムが聞こえてきた。