さっちゃんの足跡

 家に帰ってきました。 でもママは仕事に行ってます。
「さっちゃんももう一人でも大丈夫だよね?」 寄宿舎に迎えに来たママはそう言いました。
 部屋に籠もって昼間はラジオを聞いてます。 そして図書館から借りてきた本を読んでます。
小さい頃、よく遊んだ友達は誰も来なくなりました。 でも寂しいとは思いません。
 (何で友達だったんだろう?) 七不思議にすら思えてきます。
幼稚園の頃、毎日のように遊びに来ていた女の子も今では擦れ違うことすら有りません。
 市立や私立の幼稚園に通っていた子たちはみんなそうみたい。
盲学校に入学しただけでまるで宇宙人にでもなったような眼で見てきます。
「いいのよ。 そんな人たちは無理して相手にしなくても。 自分たちがそうならないと分からないんだからほっときなさい。」
悩んでいた時にママはそう言われたらしい。 「そうだよね。 こんな環境にならなきゃ分からないよね。」
 先輩にも居るんです。 市立の幼稚園から盲学校へ行った人。
その人もそれまで仲良しだった人が家族ぐるみで離れていったって言ってたなあ。
 見えないだけ 聞こえないだけ、歩けないだけ、考えられないだけ、それだけじゃない。
友達になっちゃいけないの? 生きてちゃいけないの?
みんな「あんな風にはなりたくない。」って思ってるでしょう? だから会いたくなくなるの。
あなただって、いつそうなるか分からないのよ。 笑ってないで真剣に考えなさいよね。
 さっちゃんは誰に言うともなくそう吐き捨てるのでした。