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「お〜い、初音さーん?」

「はっ…!」

いけない、いけない。

ハッとして、私は羽那と詠に返事をした。

「ごめん、ぼーっとしてた」

「今日の初音ちゃんずっと上の空ですね?大丈夫ですか?も、もしかして体調悪いとか?!大変です、保健室に行きましょう!!」

「べ、別に体調悪くないし」

慌てた勢いでそのまま保健室に連れて行かれそうだったので、私は詠と距離をとった。

その様子を、羽那はやれやれといった様子で見ている。

「まあ、詠の言う通り今日はなんだか変ね。…蜂屋くんと何かあった?」

「へっ…?!」

まずい、あからさまに変な反応をしてしまった。

これは…問い詰められるパターンでは?

「そうなんですか?!」

ほらー、詠は目がキラキラしてるよ。

と、その時タイミングよく先生が教室に入ってきた。

「はいはい、休み時間終わりですよ。ホームルーム始めまーす」

ふう…助かった。

やっと3限目の授業が終わり、残りはホームルームだけとなった。

この後逃げ切れれば私の勝ちだ。

そんな変なことを考えているうちに、ホームルームが終わってしまった。

私はすぐにカバンを取って、教室をさった。

よし…!

なんとか羽那にも詠にも引き止められずに、教室を出ることができた。

このままさっさと電車に乗ってしまおう。

2人は電車に乗らないし、このまま逃げ切れるはず…だった。

「初音ちゃ〜ん?」

「わぁっ!?」

突然後ろに引っ張られてびっくり。

聞き覚えのある声な気がするので、振り返らず逃げることを考えるけれど。

腕をがっちりつかまれてしまった。

「あれあれ?逃げるなんてよくないですね!」

「現行犯逮捕」

「羽那…詠…」

残念ながら逃げられなかった。

私は仕方なく振り返り、ため息をついた。

「あらやだ、何その顔。面白くないわよ」

「面白さ求められても困るの!!」

このまま問い詰められる、絶対に。

そう思っていた時、ナイスタイミングなのか雪那がやってきた。

私を見るなり近づいてきて、羽那と詠をひきはがしてくれる。

それから、私を守るように前に出てくれる。

それを見て羽那と詠はびっくりした顔をしている。

でも、その表情は次第に変わって。

「へぇ〜。君が蜂屋くん、ね」

「あんた誰っすか」

「私は初音の友達の伊集院羽那」

「わ、私は天宮城詠です!」

「…そうですか」

特に興味はなさそうな雪那。

ちょっと、昨日の私と態度違いすぎない?

意外と他人に興味はないって噂は、本当だったのかもしれない。

でも、私にはあんなに懐くなんて…。

そんなことを考えていると、不意に昨日の言葉を思い出してしまった。

『憧れだから』

その言葉がリピートされて、ぼぼっと顔が赤くなる。

そんな私をみて、なぜか雪那は不機嫌になった。

「先輩、行きますよ。初音先輩借りるんでさよなら」

「へっ?!あ、ちょっと!!」

少し強引に腕を引っ張られて、私は雪那と廊下を歩いていった。

後ろからは羽那と詠の声が聞こえた。

「またゆっくり聞かせるのよ!絶対だからね!」

「お休みの日にでも遊びに行きましょー!」

私はチラッと振り返って、苦笑いをしながら手を振った。